重厚なジャーナリズムの担い手か、広告コンテンツの作り手か? ストーリーテラー「Narratively」編集長に聞く「長文メディアの勝算と模索」
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「1週間1テーマ、1日1本だけ」濃厚な記事を発信するNarratively

大型の資金調達や活発な人材移動など、話題に事欠かない米国メディア業界にあって、異彩を放つメディアがある。2012年9月、ノア・ローゼンバーグ氏によって設立されたWebメディア「Narratively」だ。

低コストで大量の記事をつくり、トラフィックを集めて広告で収益化を図ることが主流な新興メディアの中において、センセーショナルな話題を追わず、「1週間に1テーマ、1日1本だけ」長文や動画の形式で濃厚な記事を発信している。

テーマは「これまで語られてこなかった都市のヒューマン・ヒストリー」だ。
たとえば、「公共図書館警備員の秘密の生涯」や、鳩の群れを飼う男たちを描いた「ブルックリンの鳩の王様たち」といった記事がある。たしかにあわただしい都会の生活の中ではなかなか目に留まらないような切り口である。

各記事はデザインが洗練されていて、こうしたコンテンツを作るのはけっして安上がりではないだろう。いま、あえてこういったメディアを作る意義、そして勝算を、CEO兼編集長を務めるローゼンバーグ氏に聞いた。そこから垣間見えた米国メディア業界の潮流まで含めて、お伝えしていく。

Narratively CEO兼編集長のノア・ローゼンバーグ氏(筆者撮影)

都市のヒューマン・ヒストリーという"普遍的"な切り口

「ソーシャルメディアにはセンセーショナルな見出しの記事が踊っていて、インターネットはひどく混みあっている」。ローゼンバーグ氏は「Narratively」設立の理由をそのように語り始めた。

日々めまぐるしくニュースが消費されていく中では、しっかりと語られることのないようなヒューマン・ヒストリーを描くことに価値があると考えた彼は、ニューヨーク市立大学の「起業家ジャーナリズム」コースで学び、クラウドファンディングでNarrativelyの設立・運営資金を募った。すると、802人の支援者と5万ドル以上の資金が集まった。

当初はニューヨークのみを扱っていたが、現在はシカゴやロサンゼルスなど他の都市にも対象を広げている。多くの大都市でNarrativelyのコンセプトは受け入れられるだろうというのだ。米国内にとどまらず中国・上海にもライセンス契約で進出していて、「日本で一番大きい都市はどこだい? 東京? なるほど、ぜひそこでもやってみたいね」とローゼンバーグ氏は展望を語った。大都市の中で見落とされがちなヒューマン・ヒストリーという極めてローカルなテーマだからこそ、逆説的にグローバルに受け入れられる素地があると言えよう。

近くのホテルから見える、人であふれかえるタイムズ・スクウェアの様子(筆者撮影)