格差・貧困 社会保障・雇用・労働
20年間で児童虐待の相談は70倍増。児童虐待の相談等に対応する「児童相談所」ってどんな場所?

近年児童虐待をニュースで見ることが増えてきました。毎年夏頃に報告される児童虐待相談対応件数ですが、実はこの数字は10年以上毎年最高記録を更新し続けています。平成25年度の児童虐待相談対応件数はついに7万件を超え、20年ほど前の平成2年の約70倍に上りました。私たちが日ごろニュースで目にする量をはるかに超える数の相談の対応が日常的に行われていることがわかります。単純計算で、1日に約200件もの児童虐待に対応している状況なのです。

厚生労働省「平成25年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数等」


そして児童虐待の報道がなされる度に、「親は何をしてたのか」という批判とともに非難の対象となるのが児童相談所です。児童虐待の発見や対策、防止を担っているのが児童相談所ですが、児童相談所がいったい何を担っているのか、児童相談所の職員である児童福祉司はいったい児童虐待を見過ごしてしまったのか、その原因や現状についてはあまり語られることがありません。今回は児童虐待という命や子どもの健全育成などに関わる仕事を担う、児童相談所やそこで働く児童福祉司の現状について触れてみたいと思います。

児童相談所の負担は10年で3倍増に?

児童虐待の相談件数が毎年何千件単位で増えている中で、この児童虐待の相談に応じる児童相談所の児童福祉司の数は、たった2倍にしか増えていません。この間、児童虐待相談件数は7倍増になりました。単純に考えて1人の児童福祉にかかる負荷は3倍以上増えたことになります。

2012/04/25全国児童相談所長研修資料、厚生労働省雇用均等・児童家庭局編

もともと人が十分にいて、3倍になってちょうどよくなったということであれば問題ないと思います。しかし、児童相談所は慢性的な人手不足の状態であり、毎年児童虐待の相談件数が増えていくと、1家庭に割ける時間はどんどん少なくなってしまっているのが現状です。

児童福祉司は一度に30家庭の相談を担う?

平成22年の「児童虐待の防止等に関する意識等調査結果」によれば、1人の児童福祉司が常時受け持っている児童虐待事例の件数は、平均で31件だといいます。児童相談所の役割としては、相談があった人と話すだけでなく、以下の図のように、定期的に家庭訪問をしたり、心理士や病院などと連携し必要な対策を考え遂行したり、子どもを家庭から保護したりと多岐にわたります。

さらには、児童虐待などで児童養護施設に入所が決まった子どもたちの状況を児童養護施設と連携してサポートするなど、単発では終わらないケースが多くあります。児童福祉法によると保護者への指導等も、児童相談所の仕事として位置づけられています。

31件を常時対応している状況では、1か月20日勤務だとすると、1家庭に割けるのは丸1日もない状況となってしまっています。ニュースなどで、児童虐待で命をなくした子どもの報道がなされた際に、度々「児童相談所が家庭訪問していた家庭にも関わらず、なぜ未然に防ぐことはできなかったのか」などといった表記がされることがあります。しかし、実態としては、十分に家庭の状況を知り、継続的に点検していく人手が足りていないのが現状なのです。また、現場に近い方に、30件どころか、手が離れたようで離れていなく、頭の片隅に入れて定期的にチェックしなくてはいけない家庭等も入れると100件を超えるという話も聞いたことがあります。

児童相談所が扱う相談内容としては、以下の5つに大別されるといわれていますが、どれもすぐには解決策が出ない重たい問題です。

養護相談: 父母の家出、死亡、離婚、入院などによる養育困難、被虐待児など。
•保健相談: 未熟児、虚弱児、小児喘息など。
•心身障害相談: 障害児、発達障害、重度の心身障害など。
•非行相談: 虚言、家出、浪費癖、性的な逸脱、触法行為など。
•育成相談: 性格や行動、不登校。

もしみなさんが、30人を超える友達から、上記のような相談をされていたとしたら、小さなサインに気づいたり、適切な対応をすることができるでしょうか。それに加えて、最近は随分落ち着いたように見えるけど、気にかけている人がさらに70人いたとしたら、相談内容の重さは様々だとしも、またそれが本業だとしても、私にはとても一つひとつに適切に対応できるようには思えません。それが児童相談所の実態、と言っても過言ではないのです。

実際に児童相談所に務めている児童福祉司の91%は「あなたは、児童虐待により施設に入所した児童や継続的に援助を行う必要がある児童に対する支援に困難を感じることはありますか。」という問いに「ある」と答えています。さらに、その要因として88%が「児童福祉司や児童心理司の一人当たりのケース受持件数が多いなど人員配置に余裕がなく、児童に対してきめ細かなケアを行う時間がないから」と答えています。

総務省行政評価局「児童虐待の防止等に関する意識等調査結果」www.soumu.go.jp/main_content/000097009.pdf

「常時受け持つ児童虐待事例の件数は、一人当たり何件程度が妥当だと思うか。」という質問に対しては、6割が20件未満と答えています。

総務省行政評価局「児童虐待の防止等に関する意識等調査結果」www.soumu.go.jp/main_content/000097009.pdf
この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら