オックスブリッジが世界最高峰の研究力を維持できる理由---個人の才能が活きる組織としての強さとは?
本物のノーベル賞と展示用のノーベル賞。どちらが本物かわかるだろうか?(答えはこのページの最後に)

はじめに

世界最先端の研究を常にリードし、稀代の学者を輩出し続けるオックスブリッジ。筆者が所属する研究室の主宰者であり、2012年にiPS細胞を発見した京都大学山中教授と共同で、ノーベル生理学・医学賞を受賞したジョン・ガードン教授もその一人である。本稿では、オックスブリッジ*が世界の研究を長きにわたって牽引できる秘訣を探る。そこには、傑出した個々の能力だけでは説明できない、組織としての強さが見えてくる。日本の学術会にはまだ根づいていない、組織で機能するオックスブリッジの強さを説明する。理系・文系を含めて数多くの分野が存在するが、世界をリードする人間たちが持つ哲学には共通するものがあると感じる。筆者の考えを自身の業界に置き換えて考えていただけたら幸いである。

*本稿では特に、筆者の所属するケンブリッジ大学を中心に話をする。

世界最高峰の研究

まず、世界最高峰の研究とは何なのだろうか? 世界最速の車はスピードを計測して決まり、世界最長のビルは高さを測って決定する。しかし、研究には簡単に比較できる単位がない。研究成果の評価には多くの異なる基準が用いられる。例えば、世間からひろく認識される基準としてノーベル賞のような有名な賞がある。事実90人のノーベル賞受賞者がケンブリッジ大学とゆかりがある。この数はハーバード大学、コロンビア大学についで世界第三位である。この内、受賞者の出身大学を基準に分類すると世界第二位である。90人という数字は、歴代日本人受賞者の総数の4倍以上であり、とてつもない数字であることがわかる。

ノーベル賞を受賞する研究は数十年以上前に行われたものである場合が多い。従って、現状どれだけ価値のある研究を行っているかはリアルタイムで計測しづらい。そのため、研究成果を科学誌・専門誌に投稿した数や投稿誌の「質」を比較することによって、現在における研究のアクティビティを評価する。学術誌の質を評価する上で、インパクトファクターという値がある。インパクトファクターは学術誌の影響度を示す値であり、引用数等によって算出される。例えば、インパクトファクター30の雑誌に1回論文が載ることは、インパクトファクター1の雑誌に30回論文が掲載されるのと同じ値になる。もちろん、研究の価値は単純にインパクトファクターだけによって評価できないが、研究活動の生産性を評価する上で重要な値と位置づけられている。世界大学ランキングを算出する上でもインパクトファクターはひろく使用されている。大学ランキングで常に上位に位置するケンブリッジ大学は、インパクトファクターにおいても毎年高い値を記録している。つまり、現在でも世界の研究に強い影響を与え続けていることが反映されている。

※答え:本物のノーベル賞は「A」です。