川村元気×はあちゅう【後編】「小説は未開の地の地図作りに似ていて、調べて、考えて、答えを導いていくような作業です」
川村元気さんとはあちゅうさん
億男』の著者・川村元気さんに、『半径5メートルの野望』の著者・はあちゅうさんが聞く、お金と幸せ、そして欲望についての話。コンプレックスとどう向き合っているのか? 小説を書くとは? 次回作のテーマは? (写真・岩本良介/構成・徳瑠里香)

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コンプレックスをプラスに変える

はあちゅう: 私は著書のなかで、欲望とコンプレックスが燃料になる、ということを書いているんですが、川村さんにはコンプレックスがあるのでしょうか?

川村: コンプレックスは的が絞れないことです。日本って、ひとつのことをやり遂げる、職人気質の人が賞賛される国ですよね。僕もそこに憧れがあります。でも僕は、映画も小説も、音楽も漫画もアニメも好きで、とにかくやりたいことがたくさんある。それを全部やってしまい、一意専心できないことが、学生時代からのコンプレックスでした。今は、すごく広くて人より少し深ければ、それは武器になると、ポジティブに考えられるようになりました。

はあちゅう: 興味が広いというコンプレックスをプラスに捉えたことが、映画の世界に川村さんを導いたのですか?

川村: 映画は「総合芸術」と言われていて、文学も映像も美術もファッションも音楽もそこに含まれます。だから、あらゆることに興味があったことは、映画の世界においては武器だった、ということに後から気が付きました。

はあちゅう: なるほど。私は容姿にコンプレックスがあり、「日本一のブス」と言われるくらいネット上で誹謗中傷を受けた経験があって、どう見返していくか、というのが原動力になったりしているのですが。川村さんは、そういう誹謗中傷に対してどう立ち向かっていますか?

川村: 僕はtwitterもFacebookもブログもなにもやっていないんですよ。

はあちゅう: SNSを一切やっていないのは、珍しいですよね。

川村: SNSをやると悪意に触れる確率が増える気がするんです。ハートがとても弱いので、とにかく逃げるしかない(苦笑)。映画のレビューとかも傷付きたくないので見ませんね。

はあちゅう: 私は、自分がどう見られているのか気になるタイプで、悪口のほうが本当のことを言っているんじゃないかと思って、悪いものでも自分から見ちゃうんです。

川村: 悪口って魅力的ですもんね。でも、傷つかないんですか?

はあちゅう: もちろん傷つきます。最初はネット上の誹謗中傷をまともに受けて鏡を見られなくなったり、かなり落ち込みました。でも今は、見返してやる、あるいは悪口を言う人は自分の人生がうまくいっていないことの八つ当たりを私にしているんだと思うようにしています。だからそれで、ブログをやめようとは思いませんね。

『億男』 川村元気著
(マガジンハウス、1,512円)

宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。だがその直後、九十九が失踪した―。数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ…一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。人間にとってお金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?

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