川村元気×はあちゅう【前編】「日本のルールや常識が通用しない場所に行くこと、その体験にお金を使いたい」
川村元気さんとはあちゅうさん
突如、億万長者となった図書館司書の主人公が「お金と幸せの答え」を求めてめぐる30日間の冒険の物語、『億男』(マガジンハウス)。2015年本屋大賞にノミネートされ、16万部を突破したお金のエンターテインメント小説だ。その著者であり、『告白』『悪人』『モテキ』そして4月25日に公開する『寄生獣 完結編』などヒット作を手がける映画プロデューサーでもある川村元気さんに、「欲望」を包み隠さず、新著『半径5メートルの野望』(講談社)が話題になっている、はあちゅうさんが迫る。お金と幸せ、そして欲望の実体とは? (写真・岩本良介/構成・徳瑠里香)

お金に対して抱くのは、執着よりも"恐怖"

はあちゅう: 『億男』は「お金と幸せ」をテーマに書かれていますが、川村さんご自身はお金に執着がないと何かの記事で読みました。もっとお金を稼ぎたいとか、どこかからお金が降ってこないかな、というお気持ちはやはりないんでしょうか?

川村元気: 僕は、一度も宝くじを買ったことがないんです。この小説の主人公に似ていて、急に身の丈に合わないお金を手に入れてしまったら絶対に不幸になる、と思っています。だから、もし宝くじを買って当たったとしたら、舞い上がる前に、まず"大金を手に入れた人がどんな不幸な目に遭うのか"をネットで調べるだろうなと思い、実際にそういう行動をする主人公を描いています。

はあちゅう: お金に対して持っている考え方が成熟していますよね。「身の丈に合わないお金は持たないほうがいい」というその価値観はどこからきているんでしょうか? お金に不自由しない家庭で育ったとか、幼少期から培われたものなのですか?

川村: 全然そんなことはなくて、本当に普通の家庭で育ちました。もともとお金に対する執着は薄い方だと思うのですが、それは映画という儲かりそうで儲からない業界にいることが影響しているのだと思います。映画って、数億円も制作費がかかるのに、どこか利益に関してはファジーな理屈で動いている不思議な業界なんです。僕も映画プロデューサーとして大金を預かって企画を動かしているんですが、どこかお金に対しては冷めているというか、客観的になってしまうんです。

はあちゅう: お金に対して執着もなく客観的であるにもかかわらず、今回「お金」をテーマにされたのはなぜですか?

川村: 僕自身というより、周りでお金によって壊されてしまう人たちを数多く見てきて、お金に対する"恐怖"をずっと抱いていました。前作の『世界から猫が消えたなら』は、「死」に対して僕自身が異常な恐怖があったので、自分が世界から消える…つまり死ぬ話を書くことで、逆説的に生きる事を描こうと思ったんです。今作『億男』は、「お金」が怖いし、苦手だし、避けていきたいと思っていたからこそ、小説に書くという行為を通して向き合ってみようとチャレンジしたところはあります。

はあちゅう: 苦手だからこそ、あえて掘り下げていこう、と。

『億男』 川村元気著
(マガジンハウス、1,512円)

宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。だがその直後、九十九が失踪した―。数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ…一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。人間にとってお金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?

Amazonはこちらからご覧ください。