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死亡者続出!体への負担は少ないが、命の保証もない「腹腔鏡手術」はこんなに危険です(下)

医者はなぜ「やりたがる」か

今回問題になっているケースでは、術後、数ヵ月以上経ってから死亡した患者もいた。前出の都内大学病院外科医が言う。

「がんを切り取ったあとに臓器などを縫合しますが、それを内視鏡でやるのも難しい。縫合不全から感染症など合併症を起こして、しばらくして命を落とすこともある」

皮膚につく傷は小さくても、臓器は大きく切り取られている。外から見たらきれいに治っているようでも、術後の体内の患部では何が起こっているかわからないのだ。

前述したように、傷が小さいので術後の痛みが少なく、退院も短くて済む点は大きなメリットである。高齢者の場合、入院中に足腰が弱り、寝たきりにつながるケースもあるため、術後の生活の質を上げるという点でも、恩恵を受ける人は多い。

だ が、そのリスクとベネフィット(利点)を患者や家族が判断し、治療法を選択するのは難しい。医者は、手術前に死亡率や合併症のリスクなどについて説明する 義務があるが、患者がそれをきちんと理解しているかは別問題だ。群馬大学のケースでは、遺族の一人がこう証言している。

「執刀医から『すごく簡単な手術だから大丈夫。2週間で退院できる』と言われました」

結局、現場の医者の倫理観に委ねられているのが実状だ。

「難しい症例を新しい手法でやったものは、学会でも注目されるので、自分の実績につながりやすい。その功名心が医者にあるのは否めません。腹腔鏡で、これまで救えなかった命が救えるようになるわけではない。医者はもう少し冷静であるべきです」(前出・川崎医師)

誰も成し遂げていない実績を作るため、「医者がやりたい手術」に患者を誘導する。そういう例が少なからずあるという。

それでも腹腔鏡を選ぶなら

では実際に、患者や家族はどう治療法を判断すればいいのだろうか。

がんの場合、臓器によって安全性や確実性に大きな違いがある。腹腔鏡手術が向いていて、現在もっとも普及しているのは、大腸がんだ。元国立がんセンター中央病院長・土屋了介医師が言う。

「がん研有明病院の場合、大腸がん手術は開腹より腹腔鏡のほうが症例数が多く、第一選択になってきています」

胃がんでも腹腔鏡手術が広まってきたが、開腹のほうが確実性が高いという。土屋医師が続ける。