ドイツ
ロシアの脅威を口実に軍拡に余念がないNATO加盟国の謎
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「21世紀のアメリカ竜騎兵団」の目的とは

3月22日、米軍の戦車軍団がエストニアを出発した。このあと、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコを通って、最終目的地であるドイツのバイエルン州まで、NATOの最東リミットに沿って南下。延々1800キロ、ロシアとウクライナの鼻先を、何台もの装輪装甲車が進行したわけだ。この作戦は、「Dragoon Ride」と名付けられた。

Dragoonとは竜騎兵のことだ。竜騎兵は、近世ヨーロッパの兵科の一つ。現在は、戦車部隊や空挺部隊などに勇ましさを演出するため、Dragoonと命名することが多い。今回の作戦もそうだろう。

さて、この21世紀のアメリカ竜騎兵団は、ときどき主だった町の広場などで停止しては、地域の住人に、兵士と語らう機会を作り、戦車に親しんでもらったそうだ。子供は戦車に乗ったり、操縦席に座ったりできたという。たぶん感動して、是非、いつかこの戦車に乗って戦争をしたいと思ったに違いない。

ただ、この戦車軍団は移動遊園地ではないため、道中、それぞれの国の軍隊と共同軍事演習も行った。米軍の指揮官によれば、それによって、NATO加盟国の連帯強化を図る。また、通常は鉄道か船で輸送される装輪装甲車が、長距離を黙々と進行することで、柔軟性や小回りの良さを強調し、米軍が多くの国境を股に掛け、NATOのパートナーと共同作戦を展開する力のあることを示すのが目的だったそうだ。誰に示すのかというのは、言わなくても分かる。

Dragoon Rideについてのドイツメディアの報道は、不自然なほど肯定的だった。「集まった人たちは大喜び。住人の一人は『ロシアに対する安全保障となる。来てくれたのは大変良いことだ』と語った」(ドイツ第1テレビのオンラインページより)。そのあと私は、共同の軍事演習のニュースがいつ出るか、いつ出るかと待っていたが、報道されることはなかった。