「中国の脅威にどう備えるか」安保法制見直しの基本論点を整理すると、安倍政権のしたたかさが見えてくる
中国の軍事支出は日本の4倍。単独ではかなわない photo Getty Images

安倍晋三政権の最重要課題である安全保障法制の整備をめぐる国会論議が5月の連休明けから始まる。いったいなぜ集団的自衛権の行使を容認する法整備がいま必要なのか。安倍政権の立場は本来あるべき姿からみれば、実はきわめて抑制的でもある。論戦を前に、もっとも基本の論点を整理しておこう。

 中国の軍事支出は10年間で4倍に

なぜ安保法制の見直しが必要か。それは、なにより世界とりわけ東アジアの安保環境が険しく緊張が高まっていて、日本が少なからぬ脅威にさらされているからだ。リベラル左派と立場を分かつのも、実は現状認識が出発点である。リベラル左派は安倍政権の考え方をあれこれと批判するが、そもそも日本に対する脅威の存在をどう受け止めるか、という肝心の議論が欠けているのだ。

一言で言えば、私を含めて集団的自衛権の行使容認賛成派は脅威を深刻に受け止めている。ところが、反対派は脅威に目を背ける。現状認識がまったく異なっているから、対応策の議論も180度、違ってしまうのだ。

日本にとって最大の脅威が何かといえば、中国である。北朝鮮の核ミサイルもあるが、ひとまず措く。中国の習近平国家主席は中国共産党総書記に就任した直後の2012年12月に広州戦区の陸海軍部隊を視察して「軍事闘争の準備を進めよう」と演説した。尖閣諸島の領空を国家海洋局所属のプロペラ機が初めて侵犯したのは、その直後だった。

13年1月の海上自衛隊護衛艦に対するレーダー照射事件、同年11月の防空識別圏設定と攻勢が続き、前後して尖閣諸島周辺の領海を中国公船がひんぱんに侵犯を繰り返している。中国が周辺海域に眠る原油や天然ガスの資源目当てに、尖閣諸島に対する領土的野心をみなぎらせているのは、もはや議論の余地がない。中国自身が「尖閣諸島は中国のもの」と言っている。

一方、中国の軍事支出は10年間で4倍、26年間で40倍に膨張した。権威あるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、中国の軍事支出は2014年で2163億ドル。対する日本は457億ドルである(http://www.sipri.org/research/armaments/milex/milex_database)。実に4倍以上だ。一連の行動と軍事拡張をみて「脅威」と感じないようでは、おめでたすぎて話にならない。