『マンガ おはなし物理学史』
物理学400年の流れを概観する
小山慶太=原作 佐々木ケン=漫画

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物理学の歴史を親しみやすく視覚化

 舞台は大きく2つの時代で繰り広げられます。古典物理学の時代では力学と電磁気学を学び、電気と磁気が統一される前夜に遭遇。現代物理学の時代では量子力学と相対性理論という、光速に近い運動や重力場といった、われわれの想像を超えた領域に引き込まれていきます。高校生3人組が歴史上の科学者たちを直撃しながら、物理学発展の舞台裏を臨場感豊かにレポートします。


まえがき──本書のガイドをかねて

 物理学の歴史はざっくり捉え、ケプラl、ガリレオのころからかぞえて今日まで、およそ四〇〇年といえる。その四〇〇年をマンガでわかりやすく、しかも一冊の新書に収めてしまおうという、大胆にも無謀なる企てに挑んだのが、本書である。

 大胆にも無謀なる様は、本書の構成(章立て)によく現れている。四〇〇年の歴史をまず、古典物理学の時代(一七~一九世紀)と現代物理学の時代(二〇~二一世紀)に大きく分け、さらに、それぞれを二つの主要テーマに絞って、描き切っているからである。前者に設けたテーマが「力学」と「電磁気学」、そして後者が「量子力学」と「相対性理論」である。

 こう書くと、たった四つのテーマで物理学四〇〇年の通史が果たしてたどれるのかと、眉に唾をつけて聞きたくなるかもしれないが、どうしてどうして、歴史のメインストリームと物理学の基本的枠組みさえ押さえれば、それは十分、可能だったのである。

 潮流の源は身近に目にする、さまざまな運動現象への関心にあった。たとえば、リンゴの落下や惑星の動きなどは、その代表であろう。こうした対象を通して最初に構築された物理学の体系が、第1章の力学である。それは実験、観測によるデータの蓄積と分析、そして数学にもとづく理論という、二つの方法の融合として生まれた。

 融合の結果、力学は基本法則と基本方程式という応用力の高い道具をつくり出し、それを使って、多様な運動現象を演繹的に解明することに成功した。そこで、最初に確立された力学の発展をたどれば、物理学全体の特徴とエッセンスが理解できるのである。

 さて、電池の発明が契機となり、一九世紀に入ると、第2章で取り上げる電磁気学が力学につづいて体系化される。電気と磁気の間には互いに強い相関が見られることが、数々の実験によって確かめられ、両者を統一して記述する基本方程式が導き出されるわけである。そして、昔から人間の関心事のひとつであった光も、電磁気学の中に取り込まれていった。

 こうして、力学と電磁気学を二つの柱として、古典物理学は完成を見るに至る。

 ところが、それも束の間、二〇世紀に入るや否や、物理学は変革の嵐に見舞われる。一九世紀までに培った知見や常識がそのままでは通用しない世界があることに、物理学者たちは気づき始めたのである。そうした嵐の時期を経て誕生したのが、第3章の量子力学と第4章の相対性理論である。

 この二つに共通する特徴を一言で表せば、それらが語る内容は人間の素朴な実感とは相容れない、奇妙なものであるということである。その理由は量子力学が超ミクロの対象を、また、相対性理論が光速に近い運動や強い重力場といった、我々の身近な世界から大きく隔絶した対象を扱っていることに起因する。つまり、人間の五感をはるかに超えた領域に、物理学は足を踏み入れてしまったのである。

 この二つの新しい理論体系を柱として、現代物理学は素粒子から宇宙までをその射程に収め、さらに物質の多彩な性質の解明を通し、多くのテクノロジーの産物をつくり出している。

 というわけで、さきほど、大胆にも無謀なる企てと書きはしたが、こういう構成で、物理学四〇〇年の流れが概観できることを納得していただけたかと思う。

 さて、本書には私によく似たコヤマ先生なる人物が、狂言回しとして登場する(ただし、実物はもう少し若々しいと、本人は呟いていますが)。また、高校生三人組が読者の代表となり、歴史上の科学者に質問し、合の手を入れながら、話の理解を深める手助けをしている。

 さらにもう一人、謎のアシスタントさん──これがなかなかの美人──の存在が大きい。彼女の正体は物理学の重要な話題と重なる形で最後に明らかにされるので、どうぞ、お楽しみに(だから、決して、先に最後の頁をあけないで下さいね!)。

 こうしたマンガならではの遊び心を話の展開にうまくとけ込ませ、物理学史を親しみやすく視覚化できたのは、漫画家、佐々木ケン氏の創意工夫のおかげである。

 それでは、皆さんも我々と一緒に、物理学の歴史探訪に出かけましょう。

原作 小山慶太(こやま・けいた) 
一九四八年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。理学博士。早稲田大学社会科学総合学術院教授(科学史)。著書に『入門現代物理学』『科学史年表』(以上、中公新書)、『若き物理学徒たちのケンブリッジ』(新潮文庫)、『ノーベル賞でたどる物理の歴史』(丸善出版)、『エネルギーの科学史』(河出ブックス)など多数。

漫画 佐々木ケン(ささき・けん) 
一九四八年鳥取県生まれ。東京大学漫画クラブ(ホントは理学部地球物理学科)卒業後、数年間の会社員生活を経て漫画家となる。主に一コマの風刺画や四コマ漫画などを描く。作品に『マンガ おはなし数学史』『マンガ おはなし化学史』(共にブルーバックス)の他、『ガリレオ=ガリレイ/ハーヴェー』等の漫画人物科学の歴史シリーズ(ほるぶ出版)などがある。(http://www1.plala.or.jp/SASAKIKEN/)
『 マンガ おはなし物理学史 』
物理学400年の流れを概観する

小山慶太=原作
佐々木ケン=漫画

発行年月日: 2015/04/20
ページ数: 320
シリーズ通巻番号: B1912

定価:本体  1080円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)