吉本ばなな【前編】「小説家になることを5歳に決めて、書くこと以外何もできないので、ずっと書いています」

吉本ばななさんと向田麻衣さん

Lalitpurの向田麻衣が拠点とする東京、カトマンズ、ニューヨークで活躍する日本人にインタビューをする本連載、第2回のゲストは作家の吉本ばななさんです。向田は5歳の時に『キッチン』を読んで以来、手に入るすべての本を読み、何度も背中を押してもらってきました。「情熱大陸」を観てくださったばななさんにリクエストいただき、お化粧をさせていただくことからインタビューが始まりました。(写真・岡村隆広/文・徳瑠里香)

向田: 人生のなかでこんな日がくるなんて信じられない。一番会いたかった方にお会いして、お顔に触れるなんて、事件です。初めてばななさんの本を読んだ5歳の自分に、今こうしてばななさんに会えたことを伝えにいきたいくらいです。

吉本: 「情熱大陸」を観ていて、お化粧されている人たちはどんな気持ちなんだろう? と思っていたから、それが実感できることが嬉しいです。

5歳で小説を書くことを決めてから

向田: 一番初めに読んだ大人向けの小説がばななさんの『キッチン』で、それから人生のさまざまな場面でばななさんの本に支えられてきました。「物書き」という仕事に、幼い頃から憧れがあって、物語を書いてみたことがあるんです。でも一行書き始めた時に、それまで開いていた全ての扉が閉じた感じがして、続きがかけませんでした。そのとき、作家というのは神聖なお仕事なんだな、と感じました。

吉本: いやいやいや、私はただの怠け者ですよ(笑)。書くこと以外何もできないので、書くしかないな、と思ってずっと書いているんですけれど。

向田:「朝起きられないから起きなくてもできる仕事を選んだ」、「お姉さんが絵が上手だったので私は文章にした」とおっしゃっているをインタビューを拝見しました。でも、20代30代であっても、自分が自分自身であることを受け入れられず「これからどうしよう」と迷っている人が多いなかで、どうしてそんなにズバッと決められたんですか?

吉本:小説家になることは5歳に決めたんですが、多分、子どもだったからじゃないですか(笑)。ほかにいろんな仕事があることを知らなかったからだと思います。

向田: それから大人になるにつれて別のお仕事に…と揺れたことはなかったんですか?

吉本: ならなかったですねえ。小学生のときからずっと、なんで仕事が決まっているのに学校に行かなきゃいけないんだろうって思っていました。反抗してヤンキーになれるタイプじゃなかったので、授業中にコツコツ書いたりしていましたが、不思議でした。

向田: 一番初めに小説を書いたのはいつですか?

吉本: 7歳とか8歳ですかね。子どもだから書いては休み、10歳で完成させました。

向田: それで、大学生のときに『キッチン』で海燕新人文学賞をとられて…。今、そのときを振り返ってみてどうですか?

吉本: 当初は、決まったターゲットに決まったテーマで細々と小説を書いていこうと思っていたので、そうじゃなくなったことに困っていました。キョンキョン(小泉今日子)とかに「読んでます!」って言われても「なんて顔が小さいんだ!!」とミーハーな気持ちを抱いていたり(笑)。最近ようやく芸能人と普通に話せるようになりましたね。

向田: 意外です(笑)

吉本: そのときに小説を書いていくには経験が足りないな、と思ったので20代はいろんなことをやってみて、30代は身体を壊しながらも調整し、40代でやりたいことがわかってきて、50代で自分がやってきたことを若い世代にシェアしよう、と、ここまで歩んできた感じです。突然新しいことを始めようというわけではないけれど、流れのなかで常に自分が思ったように動けるように、身軽な状態にはしておきたいな、と思っています。

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