佐藤優さんに質問「IS(いわゆるイスラム国)への武力行使を子どもに説明する場合、その正当性・合理性をどのように説明すべきでしょうか」

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.058 質疑応答より

【質問】 (前略)イスラム国に対し、相手側の言い分を聞く方法があるのでは、との心情を抱いておりましたが、佐藤さんの言説にふれ、武力行使によるイスラム国の解体を徹底的にやる必要性とともに、無知の恐ろしさも感じています。

そこで質問なのですが、このイスラム国への武力行使を子どもに説明する場合、その正当性・合理性をどのように説明すべきでしょうか? 一般に子どもは身近なものと大きなものを同じ論理で説明したいし、白か黒かに対して潔癖なところがありますが、現実は争っている双方に言い分があり、それぞれに白も黒も抱えている中で、決断によって何かを切り捨てるのが通常かと思います。

自分たちが武力や暴力の行使を是とする際、その論理が特定の個人の排除や沖縄への差別の構造化などのように、誤った言い分の正当化へと飛躍してしまわないように子どもへ説明するにはどのように話すとよいでしょうか。(不明)

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――回答: このテーマについて、子ども向けに書いた優れた本を読むとヒントが得られます。例えば、加藤朗『13歳からのテロ問題 リアルな「正義論」の話』(かもがわ出版、2011年)です。

この本は、桜美林大学の加藤朗先生が、和光中学校(2011年度)の11人の生徒(男8人、女3人)とテロ問題をテーマにして行った特別授業の記録です。加藤先生は、ただ知識を教えるだけでなく、自分の頭で考えることの重要性を伝えます。生徒たちもテロを遠い外国の出来事ではなく、自分の周辺で起きている問題と結びつけて考えます。

<生徒H いじめも暴力。

加藤 そうだね。イジメも含めて、暴力と言えるかもしれない。

一般に暴力というと、私たちは物理的暴力だけを考えるでしょう。そして、物理的暴力はやっちゃいけないということに、みんな納得する。

でも本当に厳しいというか、本当につらく、人にダメージを与えるのは、心にダメージを与えるものなんだ。心理的というか。

生徒I 心理的なものが一番ダメージを受けやすい。

(中略)

加藤 じゃあ、テロは、何だろう。物理的暴力か、それとも、心理的な、人の心に与える暴力なのか。

生徒A 両方だと思う。ビルに飛行機を突入させて、死ぬ人、傷ついて苦しむ人もいれば、それを見て、怖いな、恐ろしいなと思って、心が苦しいと思える人もいる。>(109頁)

加藤先生との対話を通じ、生徒たちは、テロが単なる物理的暴力にとどまらず恐怖で他人を支配する心理的暴力であることも理解します。

この本を読んで、暴力について考えると、テロや暴力にどう対処したら子ども自身に考える力がつきます。

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.058(2015年4月8日配信)より