【有料会員限定記事】古くさいビジネスホテルを一掃し、女性にも使いやすいホテルを!/リチャード・ブランソン
シカゴにあるヴァージン・ホテルの一室---〔PHOTO〕gettyimages

サービスの向上を評価したのは特に女性客だった

起業前の数ヵ月間はビジネスについて学ぶことが非常に多いのですが、本当に教育されるのは、実際に顧客を相手にする日からです。

今年初めに、初のヴァージン・ホテル(Virgin Hotels)をシカゴのダウンタウンにオープンして以来、顧客が望んでいることや、何がうまくいって、何がうまくいっていないのか、さらにその改善方法について開業前よりもはるかに多くを学びました。そして驚いたことは、ホテルの創業た経営が抜群に楽しい経験だということです。

ヴァージン・ホテルは女性のビジネス旅行客にとってどれほど便利か、という点に多くのメディアの関心が集中しました。

実はヴァージンはこれまでにも女性を対象にした会社であるヴァージンブライドやヴァージンコスメティックを起業してきました。それがうまくいかなかったのは、ヴァージンブライドがその良い例ですが、われわれの製品を支持する市場がなかったせいです。しかしホテル業界と言えばこの100年のあいだ旧態依然たるものでしたから、単に何か変わったことやることではなく、サービスの実質を向上させることにチャンスはあると考えたのです。

私たちの中心目標は初めから、万人向けのよりよいホテルを創ることでした。女性からの評価が高い、自然光を取り入れたりクロゼットに靴専用の収納スペースを用意するなどはその過程でたまたま始めたことなのです。特に女性の旅行客を対象にアピールをしようとしたわけではないのですが、その好結果には大いに満足しています。この経験をホテルのすべてのゲストに広げていくつもりです。

今までに工夫で万人が使いやすいホテルを目指す

私はこれまでの半生で、顧客が不当に扱われている分野をいつも探してきました。女性のビジネス旅行客の分野もまさにそれでした。ビジネス旅行者の半数近くが女性にもかかわらず、実に多くのホテルのフロントがこの数十年間、マッチョで暗く、親しみが持てないものでした。

私が話したビジネスウーマンたちの多くが、ビジネス招待旅行に参加しなければ、人脈の開拓も、自分の考えを新しい舞台で表明する機会も失って、結局はキャリアを損なう、と指摘します。しかし上級職の男性はどうしても、こうした業界の団体旅行に男性ばかりを招待しがちです。その1人によれば、女性をなかなか招待できないのは、まずは宿泊含みである具合の悪さ、ひいてはアメリカでは下手をすれば訴訟沙汰になりかねないことを恐れるためだ、そうです。

この指摘をわれわれのチームはまじめに受け止めました。変えなければならないことが誰の目にも明らかな時期というものがあります。この場合は、ビジネス旅行者は今までと違う部屋を必要としていて、市場は男性に限らない、ということです。

そこでわれわれは伝統的なホテルの枠組みを捨てました。これまでのような部屋は持たず、スライディングドアで仕切られるスペースに替えたのです。これによって宿泊客はより広いプライベートな空間が確保できます。しかしルームサービスはほかの泊まり客を邪魔することなく個々の客に提供できます。また仕切り部屋の外の廊下の照明を明るくして女性客に安心感を与えています。ホテルのレストランの食事と言えば通常は大げさです。しかし、私たちのコモンズクラブでは、朝昼夜を問わずヘルシーで多彩なメニューを用意しています。

もちろん、女性客だけに注力しているわけではなく、男性客も忘れてはいません。ヴァージン・ホテルは、インクルーシブ、つまり万人向けなのです。どの会社でもそうですが、あらゆる種類のグループに奉仕することが成功への近道です。

私たちホテルとほかのホテルとの際立つ違いは、こまごまとした追加料金で宿泊客を悩ませない点です。ルームサービス料は市価と同じ。WiFi料金もありません。キャンセル料も深夜12時前なら頂きません。早過ぎるチェックインや遅すぎるチェックアウトにも追加チャージはありません。これらのイノベーションは客種を問わず評価されています。

この分野の機は熟し過ぎていた

アイデアを磨き上げる過程はまだまだ続きますから、あらゆるゲストのご意見を歓迎しています。今年の1月、妻のジョアンが、シカゴのヴァージン・ホテルに泊まるというので、私も急遽合流し、実体験することにしました。私と同様、ジョアンもメモ魔です。私が着いた頃には、ジョアンのノートにはすでにスタッフと話し合うべき事柄がかなり書き込まれていました。ジョアンのコメントの多くはポジティブなものでしたが、彼女自身、頻繁に旅行するので、その意見はホテルのサービス向上に大いに貢献したはずです。

男女差別との闘いはもっと大規模に展開されなければなりません。ひとりひとりの独特な貢献を見落とすことなく評価することは、職場のすべての人々の責任です。この姿勢はもちろんヴァージン・ホテル一同にも浸透していますが、ほかのどんな職場であっても差別がなくなるように支援したいと願っています。

最近私は、フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグを初めとする30人の企業トップが参加したイベントに加わりました。男女差別を少なくするためにビジネスリーダーができることは何か、が議題です。いつものよに大量にメモしたのですが、どの会社であれ、多様性の確保が、いかに競争力を向上させうるものか、について大いに学びました。そこではショッキングな統計も紹介されました。それによると、フォーチュン500社中、女性CEOはわずか5パーセントに過ぎず、役員以上に広げても19パーセント、上級管理職以上でも25パーセントに過ぎないのです。

こういった社会的男女格差を考えれば、女性のビジネス旅行客に合わせたホテルサービスが生まれるまでにこれほど時間がかかったのも不思議ではありません。また、だからこそ、今この市場は爆発寸前まで成熟しているわけです。

(翻訳/オフィス松村)

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※Facebook COOのシェリル・サンドバーグとペンシルベニア大学ウォートン校教授、アダム・グラントによる、男女平等のニューヨークタイムズの記事はこちらからお読みいただけます。(現代ビジネスプレミアム倶楽部有料会員限定の記事です)
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