テン コーポレーション・用松靖弘社長「机上の論理で『こうしたら儲かる』などと考えると必ず失敗します。間違えないよう、常に言い聞かせています」

一昔前は贅沢だった天丼をワンコインで出す『てんや』。職人技だった揚げる作業を、「オートフライヤー」により機械化。食材の加工も店舗搬入前に行うなど、様々な工夫の結果、実現した価格だ。レジ横に置いてあるキャラクターにもなっている岩下善夫氏が創業し、現在は、レストランチェーン等を全国に展開するロイヤルグループの傘下にある。社長はロイヤル出身で、飲食の現場からたたき上げの用松靖弘氏(60歳)だ。

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もちまつ・やすひろ/'55年、大分県生まれ。'77年3月に同志社大学経済学部を卒業し、ロイヤル(現ロイヤルホールディングス)入社。'11年にロイヤルホスト常務へ就任した後、'12年より現職。売り上げは、既存店前年比で3年前が102%、2年前が106%、昨年が108%と、飲食への愛情で社業を成長させる ※テン コーポレーションのwebサイトはこちら

五角形

実は天ぷらだけでなく、お箸や容器など、細かいところにもこだわっているんですよ。お箸が丸形だと、ご飯や麺がスルッと落ちちゃうでしょ? そこで、箸の先の方を五角形にしてあるんです。丼を食べる楽しさってかきこむことにもあると思うんですが、この箸ならかきこみやすい! しかも、お持ち帰りの容器の蓋は、湯気のしずくが極力天ぷらに落ちない形だから、あとで食べても衣が適度にしんなりしている程度で、ベチャッとせずおいしい。魂、入れちゃいました(笑)。

神宿る

私はロイヤルホールディングスの創業者である故・江頭匡一氏に鍛えられました。彼は、1ヵ所で調理してチェーン各店に運ぶ「セントラルキッチン方式」など、現在の飲食チェーンが当然のように導入している基礎を一から築いた人物です。

今も覚えているのは、私が焼き肉チェーンの責任者だった時のこと。キムチの持ち帰り用のプラスチック容器を提案したら、じっと凝視し「水を入れてこい」と言う。その後、やおらグルグル振り回し、彼にも私にも水がかかると、一言「失格!」と言われた。「キムチの汁が漏れるだろ?」という意味です。その瞬間、彼がよく言う「細部に魂を入れろ」「現場に神宿る」という言葉が腑に落ちた。

25周年 '13年撮影。前列右から2人目が用松氏、左隣は、てんやのレジ横のキャラクターにもなっている創業者の岩下氏

一人旅

子どもの頃から食べることが好きで、京都で過ごした大学時代は、料理旅館でアルバイトし、十勝ワインが世界で金賞を受賞したと聞けば、一人で北海道まで飲みに行くような学生でした。当時、大学を出て飲食業に携わるのは、少々異端だったのですが「鶏口となるも牛後となるなかれ」と考え、迷わずロイヤルへ入社しました。自分の適性が、ハッキリわかっていましたね。勤め上げた結果「好きなことを仕事にするっていいものだなぁ!」と思います。

コツ×2

ロイヤルでは、ありとあらゆる職種を経験しました。その中で様々な人を見て「誰でも一流になれる可能性がある、そのコツは2つだ」と学びました。結論は「コツコツやる」です。コツが2つだから「コツコツ」(笑)。人生は、いい時もあればダメな時もある。そして、よくない時に一生懸命やれるかどうかで人の値打ちが決まる。好きな言葉は「一隅を照らす」。表舞台に立てない時も腐らず続ける。店がうまくいかず、降格を経験した時に強く思いました。