著者とジンベエザメ(提供:素潜り写真家 Kumako)

謎の巨大生物「ジンベエザメ」~人との深い結びつきに思いを馳せる

沼口麻子「サメに恋して」第19回

水族館の4番バッター

3月のわたしの誕生日プレゼントに、可愛らしいバッグをいただいた。フィリピンのお土産だという。青地に「butanding」の文字。この聞き慣れない文字をgoogle検索してみると、タガログ語で「ジンベエザメ」という意味であることがわかった。

ジンベエザメといえば、全国でも有名な水族館の、一番人気の魚だ。野球でいえば4番バッター、動物園でいえば、象やライオンの地位を占める。正式な最大の記録は13m。世界最大の魚類で、これは映画『ジョーズ』のモデルになったホホジロザメの2倍以上のサイズ。もっともっと大きくなるのではないかとの見解もある。

ただ、大型生物だからと言って、積極的に人を襲うようなことはない。もちろん、どの大型野生動物も同じように、近づいたら危険なこともあるけれど、ジンベエザメの性格は温厚で、主に海中を浮遊するプランクトンを好物にしている。恐らく、プランクトンを食べるためにはなんら機能しない、米粒のように小さい歯が並んでいるところも不思議で、愛らしい。

大きな青みを帯びた身体の表面には格子模様と白い斑点。まるで和服の甚平を想像させることから、それが和名の由来になったのだろう。

フィリピン オスロブにて 提供:みのわかえる

ちなみに英語ではクジラのように大きいサメということで「whale shark」と呼ばれる。フィリピンには、群れをなして遊泳するジンベエザメとダイビングができるポイントがあることで有名で、近年、多くのダイバーを惹きつけてやまない。

先日テレビ番組で、デートで行きたい水族館ランキングをみたが、1位:沖縄美ら海水族館2位:大阪海遊館とジンベエザメを目玉とする水族館が上位にランクインしていた。きっと大きくゆったり泳ぐ姿に、多くの人たちが癒されるのだろう。

【ジンベエザメのいる水族館】(2015/4時点)
・横浜・八景島シーパラダイス
・大阪海遊館
・のとじま水族館
・沖縄美ら海水族館

わたしもご多分にもれず、ジンベエザメを見に水族館へ行くこと大好きで、一昨年は大阪海遊館のジンベエザメを見ながらお食事会を催したり、沖縄美ら海水族館にある東洋一大きな水槽にいる3匹のジンベエザメが身体を縦にして大きな口を開けてエサを食べるなどユニークな姿を見るために、沖縄を訪れたりした。

ちなみに、その餌付けシーンを見たい場合は、餌付け時間である15時と17時に「黒潮の海」水槽の前でスタンバイすることをオススメする(2015/4時点)。

謎のベールに包まれた生態

大阪海遊館などの水族館の売店へ行くと、ジンベエザメグッズがところ狭しと置いてある。大人から子どもまで人気のこのサメ、さぞかし研究も進んでいるかと思いきや、案外そうでもないらしい。

【ジンベエザメの謎その1】いまだにわかっていない出生場所。行方不明のジンベエザメの赤ちゃん

このジンベエザメ、いまだに世界中のどこの海で生まれているかもわからない。日本近海で目撃例が多いジンベエザメは小さいもので3m前後。自然の海の中で、生まれて間もないジンベエザメの赤ちゃんに出会ったことがある人はいないというから、驚きだ。

水族館で繁殖観察を試みたいと思うのだが、成熟したジンベエザメのメスは全長8m以上。ゆうに8m以上にもなる巨体を自然界に近い形で飼育できるような好条件な施設は、世界中を探しても今のところ見当たらない。

【ジンベエザメの謎その2】卵で生まれるのか、それとも母親のお腹から生まれるのか

サメの生殖様式は、じつにさまざま。600種類近くいるサメ全体の約3割が卵を生み、残り7割が母ザメのお腹から生み出されてくる。ジンベエザメの場合は後者だが、胎生にもいろんな種類がある。ジンベエザメは、お腹の中で卵を返してから子ザメを出産するタイプだ。

以前は、ジンベエザメの卵が海にプカプカ浮かんでいたことから、卵性だと思われていたが、1995年に、お腹の中に子ザメをたくさん妊娠した個体が記録されたことから、その仮説がひっくり返った。

しかしながら、環境適応能力に長けているサメのことだ。科学的な根拠はないが、ジンベエザメも外部環境によって、卵生と胎生に産み方を分けることができるなんていうスーパー能力を持ち合わせているなんてことはないだろうか。個人的な思いは巡る。

フィリピン・オスロブにて 提供:みのわかえる

【ジンベエザメの謎その3】サメ界一の子だくさん

1995年に水揚げされた10mを越える個体の子宮内から、300匹以上の子ザメが確認された。少数精鋭主義を貫く、サメの仲間は一度の出産数が1~数十匹、多くとも100匹前後で、マンボウやマグロなどの硬骨魚類の繁殖戦略と比較すると、極端に少ないという特徴がある。ジンベエザメの場合は、サメ界では出産数が一番多いことになる。

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