「新潟ニューフードバレー」構想
国家戦略特区の指定受け、食品産業と農業の連携[食と農]

新潟市は、昨年5月に大規模農業の改革拠点として国家戦略特区の指定を受け、食品産業と農業の連携する「新潟ニューフードバレー」構想を推進している。米どころの特区としては、農業の規模拡大や6次産業化を進める役割も担う。「食と農」が一体となって発展を目指すフロントランナーとして注目されている。

この構想は、農業に関する「生産・加工・販売」を一体的にとらえ、シームレスにつなげていくことを目指している。新潟を世界に開かれた食の流通拠点としての食料輸出入基地とし、世界の「農業・食品産業」の最先端都市にすることを掲げている。食と農の先進国オランダが産学官の連携を図って先進的な取り組みを自薦している「フードバレー」戦略を参考としている。

産学官連携を象徴するような取り組みが1月末に、新潟市の朱鷺メッセで開かれた。新潟大学が主催した「ロシア連邦沿海地方への農業投資促進事業」の報告会だ。農林水産省の補助を受けた同大学農学部が新潟市の協力を得て、沿海地方での農業投資の可能性を探るための現地での大豆などの試験栽培や現地の情勢調査を行い、その成果を報告するイベントだった。会場には県内の輸出入関連の業者や農産品の加工業者など100人近くが押しかけた。

沿海州で大豆の試験栽培

試験栽培は14年4月から、新潟大学がロシアの国立大学「沿海地方農業アカデミー」と共同で実施。寒冷地に適した日本の発酵食品に使える大豆の試験栽培に取り組んだ。アカデミーが持つ約3ヘクタールの農地で、みそやしょうゆなどの加工に適した日本原産の品種「エンレイ」が、沿海州の土壌や気候の中で生育するかどうかを調べることが目的だ。

大豆生産は米国やカナダが世界の上位を占めるが、遺伝子組み換えによるものが主流で、日本のメーカーの多くは消費者の不安や嗜好に応えるために、現地の農家との特別契約を結んで遺伝子組み換えではない大豆を確保している。しかし、原材料費の高止まり状況が続き、発酵食品メーカーの経営を圧迫している状況だ。

試験栽培を指導した長谷川英夫・同大准教授は「新潟市内では、古くからみそ、しょうゆの発酵食品メーカーがある。大豆の供給地として沿海州が確保できれば、米国より距離が短い分だけ、輸送コストも下がり、大豆の高騰に苦しむ新潟市内の発酵食品メーカーを助けることができる」と話している。昨年の試験栽培では、エンレイの十分な生育が確認できなかったが、15年度も引き続き栽培実験を行い、北海道で栽培されている品種などを試す方針だ。

国家戦略特区は、アベノミクスのいわゆる第三の矢である「新たな成長戦略」の要の一つだ。全国で同時に6地域が指定を受けた。規制・制度改革を通して経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力の強化とともに、国際的な経済活動の拠点の形成を図ることを目的としている。

農業分野では新潟市とともに兵庫県養父市が指定を受け、(1)農業生産法人に係る農地法等の特例(2)農業委員会と市町村の事務分担に係る特例(3)農家レストラン設置に係る特例(4)農業への信用保証制度の適用――の4項目の規制緩和策が認められ、農地の流動化、商工業者とともに行う農業についての資金調達の円滑化などによって農業の6次産業化を推進することを目標に掲げている。

新潟市は県都で政令市だが、自治体としては国内最大の水田面積(約2万8600ヘクタール)を誇る大農業都市でもある。米の産出額(約371億円)、認定農業者数(3203人)とも全国1位。食料自給率は63%と政令市の中で最も高い。

また、柿の種の「亀田製菓」、ルマンドの「ブルボン」、サトウのごはんの「佐藤食品工業」など全国シェアの高い食品メーカーがあり、食料品製造出荷額は2230億円(市町村別で全国6位)に達する。

ロシア、韓国、中国の3カ国の総領事館があるなど国際性も高く、新潟港を中心に日本海側の食料品の輸出入基地を目指す「環日本海ゲートウェイ」構想を打ち出している。新潟市の松宮直樹農林水産部長は「特区の指定を受け、ニューフードバレー構想をさらに推進し、海外での日本食ブームも鑑みて、海外への情報発信も視野に入れたい」と話している。

市内にある新潟大学などの教育機関や研究機関との連携を強化。「農商工連携と6次産業化」「フードデザイン」「ブランド力・情報発信」「食品リサイクル」「高度な技術研究・人材」「食産業集積・創業」の六つの戦略を同時に進行している。生産・加工・販売を一連で支援する農業活性化センター、全国初となる小学生向けの宿泊型農業体験施設を併設した「アグリパーク」(食品加工支援センター)の設置に向けて動き出している。

さらに、日本海エリア最大規模の食関連見本市となる「食の国際見本市」を開催、食に関する国際貢献を顕彰する「食の新潟国際賞」を実施している。

すでに2月には、日本ナシ、西洋ナシなどの生産、加工の事業を行う事業者に対して、国家戦略特区農業保証制度資金の融資の第1号が誕生した。さらに、遺伝子情報を利用して特産野菜を全国に売り出そうと、新潟市は1月末に、遺伝子解析のベンチャー企業「Genomedia(ゲノメディア)」(東京都文京区)と、大手広告代理店「電通」(同港区)との間で連携協定を締結した。特産の「黒埼茶豆」のうまみの原因の分析や、さらに丈夫で安定的な収量が期待できる品種の開発を目指すほか、こうした取り組みを国内だけでなく、外国人観光客向けにもPRしていきたい考えだ。


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