特集 広がる「道の駅」22年間で1040カ所 地域活性化の拠点に成長
「全国モデル」と重点「道の駅」の選定証が太田昭宏国土交通相(中央左)から授与された=東京都内で2月26日

道路網のサービス施設として建設されている「道の駅」が、全国の地域おこしの拠点に成長している。登場してから22年を経過し、今年1月現在で1040カ所にまで増えた。政府が推し進める「地方創生」でも大きな役割が期待されており、国土交通省はその成功事例の「全国モデル」として6県6カ所の道の駅を初めて選定した。さらに、ユニークな地域おこしの企画を重点的に支援する35駅とその候補として49駅も選び、今後も選定施設を増やして支援していく方針だ。それぞれの地元の自治体も道の駅を地域活性化の中核施設として期待し整備に力を入れている。

道の駅は、国交省による登録制度で、休憩施設と地域振興施設が一体となった道路施設をいう。24時間利用可能な駐車スペースとトイレ、電話や情報提供施設を備えた施設であることが登録の条件となっている。

道の駅の構想は、1990年1月に広島市で行われた「中国・地域づくり交流会」の会合で、参加者から「道路にも鉄道のように誰でも使えるトイレがあれば」と提案されたことがきっかけで始まった。従来から道路沿いに休憩施設が必要と考えていた国交省の対応は早く、翌91年10月から92年7月にかけて、山口、岐阜、栃木の3県計13カ所で「道の駅」の社会実験が行われた。現在の制度では、93年4月に正式登録された全国103駅が「第1号」とされる。

全国に広がった道の駅は、地元の名産品の販売や駅近くの観光資源と連携して多くの人々を集め、地域経済の活性化や住民サービスの向上に貢献しているほか、駅で働く人の雇用創出の場にもなっている。最も駅が多いのは北海道で114駅、最も少ないのは東京都の1駅となっており、数の上からも地方に比重がある。12年度の数字ではあるが、全国の道の駅に集まった年間購買客は約2億1000万人で、年間売上高は約2100億円だった。これはコンビニエンスストア業界で第5位企業の売上高に相当するという。

全国モデル6カ所選定

国交省は、道の駅を「経済の好循環を地方に行き渡らせる成長戦略の強力なツール」と位置づけており、有識者の意見も入れて全国モデルを選定した。今回選定された全国モデルは、群馬県川場村の「川場田園プラザ」、岩手県遠野市の「遠野風の丘」、栃木県茂木町の「もてぎ」、千葉県南房総市の「とみうら」、山口県萩市の「萩しーまーと」、愛媛県内子町の「内子フレッシュパークからり」の6カ所で「地域活性化の拠点として特に優れた機能を継続的に発揮している施設」として国交相が選定した。

また、国交省の各地方整備局長が意欲的な取り組みが期待できるとして推薦した、熊本県小国町の「小国」など35駅を重点「道の駅」に選定した。地域活性化の拠点となる優れた企画があり、今後の重点支援で効果的な取り組みが期待できる施設で、取り組みの実現に向けて関係機関が連携して重点的に支援するという。2月26日には都内で開かれた式典で、全国モデルと重点「道の駅」に選定証が贈られた。太田昭宏国交相は「道の駅は地方創生の拠点として重要な手だてだ」と強調した。全国モデルに認定された「もてぎ」がある茂木町の古口達也町長は「温かく見守ってくれている道の駅ファンのおかげで伸びている」と道の駅が地域振興に一役買っている状況を紹介した。

全国モデルになった道の駅は、多機能で驚くほどの集客力を発揮している。

96年開設の川場田園プラザは「農業プラス観光」をテーマに年間約120万人を集めている。川場村の人口約3700人に対して320倍以上の人が来訪した計算になる。同駅のリピート率は7割といい、根強い人気が数字に表れている。年間の販売額は約10億円で、地元の80人が働いており、雇用創出にも貢献。駅内の「ファーマーズマーケット」に出荷登録する農家は420人で村内農家の93%を占めており、駅が地域の農業振興にも役立っている。

伝統の衣装姿で田植えを体験する児童ら=群馬県川場村の「川場田園プラザ」で13年5月31日

同駅の構想は「川場村の産業、情報、交流の核であるタウンサイトの形成を目指す」で、朝採り野菜や特産品のブルーベリー、乳製品などの販売や、果物狩りや陶芸などの体験やイベントなど、村民と来訪者の交流の機会を提供している。また観光協会のスタッフがビジターセンターに常駐し、宿泊施設や体験施設などの観光案内をしている。冬場には、近くのスキー場へのシャトルバスなどの村内交通のターミナルにもなっているという。

96年に建設された「もてぎ」は、ユズやエゴマなどの特産品を加工する「もてぎ手づくり工房」を核として、第1次産業とこれに関連する加工や販売の第2次、第3次産業を融合させて地域に新たなビジネス業態を創出する6次産業化を推進している。道の駅が、農産物の生産指導を行ったうえで農家からユズなどの全量を買い取り、33種類のオリジナル商品を開発して販売していることなどが評価された。地場産品の提供のほかに、真岡鉄道のSLやサーキットなど地域の魅力へのアクセスポイントとして、地域センター機能とゲートウェイ機能を兼ねる賑わいの核として定着している。こうした取り組みで利用客数、販売額は10年間で1・3倍に増加している。

「とみうら」は93年開業の「第1号」だ。地域特産のビワを道の駅が中心となって加工しオリジナル商品を開発した。ビワ関連商品は50種類に上っている。ビワの規格外品の活用や需要の掘り起こしで生産農家の経営安定にも貢献している。また、ビワ狩りやイチゴ狩りなどの体験企画、関東最大規模の菜の花畑見物など、地域の観光資源をパッケージ化して都市部の旅行会社へ販売し、観光バスを年間約3000台(約9万人)誘致している。レストランや観光事業者など地域の100事業者に効果が波及している。さらに人形浄瑠璃などの地域文化の発信拠点にもなっているという。

「萩しーまーと」は01年開業と比較的新しい。年間利用者は約140万人で年間販売額は約10億円で約100人が働いている。隣接の萩漁港で水揚げされた海産物が直接店頭に並ぶ新鮮さが特長で、同漁港の水揚げ高の約15%を販売し地産地消に寄与する一方で、魚食の普及、食育の拠点として子ども向けの地魚料理教室や出張授業を積極的に実施している。売り場面積1平方メートル当たりの売上高は、一般的なスーパーの約2倍という。値も付いていなかった魚を加工品として商品化する「萩の地魚もったいないプロジェクト」を推進して漁業者の所得向上にも寄与している。

「内子フレッシュパークからり」は96年にオープンした。地元農家の女性たちが中心となり、販売額は約7億円、町の農産生産額の15%を占めており、58人の雇用を創出している。特に商品開発は、女性で構成される複数のチームで独自商品を開発するなど、女性主役の運営が特徴だ。出荷農家は当初の176人から394人に増えているという。販売管理のためのPOSシステムや流通過程で生産者情報などを伝達するためのトレーサビリティーを導入し、在庫に合わせて出荷者が直接納品することで鮮度の向上を図っている。16年間で年間利用者は6倍の約80万人、販売額は8倍の約7億円に増加した。

98年に開業した「遠野風の丘」は、東日本大震災時に災害出動した自衛隊や自治体の救急隊などの後方支援拠点となった。その後は岩手県広域防災拠点配置計画の「広域防災拠点」に位置づけられ、ベースキャンプや備蓄などの高度な防災機能を担っている。復興のために沿岸被災地の海産物を販売する鮮魚店を開設して支援したほか、同県内「道の駅」の共通販売商品を開発した。年間利用者は約100万人で販売額も約6億円に上っている。雇用も131人と多い。

重点「道の駅」では、道の駅同士が広域で連携する動きもある。静岡県伊豆地域の7市6町で作る「伊豆道の駅ネットワーク」は、伊豆半島の玄関口にあたる道の駅「函南(仮称)」に伊豆全体の情報発信拠点となる「伊豆ゲートウェイセンター函南(仮称)」を整備する。伊豆半島内にある8駅(計画中含む)の道の駅をネットワーク化し、地域の多様な観光情報を道の駅を起点に一体的に発信するとともに、外国人対応などを各駅が連携して行うことで伊豆半島圏域の周遊観光を促進し、観光競争力を強化するという。

四国の玄関口である愛媛県今治市では、しまなみ海道周辺の道の駅である「今治湯ノ浦温泉」、「伯方S・Cパーク」、「今治市多々羅しまなみ公園」、「しまなみの駅御島」、「よしうみいきいき館」が連携し、「瀬戸内しまなみ海道」のサイクリングコースや急流観潮船、海鮮バーベキューなど独自の観光資源を一体的に情報発信することで、サイクリストをはじめとした国内外の観光客を地域の周遊観光へと呼び込む環境作りを目指している。瀬戸内しまなみ海道の周辺は、観光資源が豊富にも関わらず、四国の入り口として通過され地域の周遊観光へと波及していないということが背景にある。

道の駅を自治体の拠点として整備するケースも多い。高齢化率が42%と高い高知県檮原町の「ゆすはら」では、道の駅を地域の自然を活用し健康増進を図る「ゆすはらまるごとクリニック」構想の拠点施設と位置づけ、森林浴や温泉、スポーツを通して健康を提供している。駅で空き家や雇用情報を一元的に提供し若者の移住を促進しているほか、地域の観光窓口として地域の観光名所や宿泊予約、体験ツアーの紹介を行っている。

九州北部豪雨災害で被災した中山間地域の福岡県うきは市にある「うきは」は、高齢者や女性がいきいきと働き、暮らすための拠点として整備を進めている。野菜などの集荷や出荷、道の駅の商品宅配に電気自動車(EV)を使うことなどを提案。道の駅に子どもを一時的に預かれる場所を整備し、女性が活躍しやすい環境作りを進める拠点として活用することなども企画した。

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