小泉堯史&上田正治 第1回
「『黒澤明に教わった』とは言うものの、正確には黒澤さんには誰も何も教わっていないんです」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

不世出の天才映画監督、黒澤明のDNAを受け嗣いで制作された時代劇『蜩ノ記』がこのほどDVDになって発売される。今月はそれを記念して、「黒澤組」で長く働いた経験を持つ小泉堯史監督と、撮影監督の上田正治さんをお招きすることにした。

お二人に『蜩ノ記』の撮影秘話をはじめ、巨匠・黒澤明監督のエピソードをたっぷりと語っていただいた。ちなみに映画の原作となった時代小説『蜩ノ記』(祥伝社刊)は葉室麟の直木賞受賞作であり、ベストセラーにもなった傑作である。

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シマジ 映画『蜩ノ記』は封切りと同時に観に行ったんですが、久しぶりに本格的な時代劇映画を鑑賞したなという感動を覚えました。

小泉 それはどうもありがとうございます。

立木 小泉さん、上田さん、お久しぶりです。その節はお世話になりました。

小泉 先輩、なにを仰いますか。わたしは東京写真短期大学(通称写大、現在の東京工芸大学)出身で立木さんの後輩なんですよ。

立木 監督、こんな先輩がいて申し訳ない。

ヒノ 小泉監督はそのあと早稲田大学の文学部に行かれたんですよね。わたしの先輩ということになります。

小泉 そうでしたか。本当はいけないらしいんですが、じつはダブって通っていたんです。

写大にいたときのことです。きれいな女の子が一生懸命本を読んでいる。「なにを読んでいるの?」と訊いたら「カフカ」と言うんです。「え? カフカってなに?」ですよ。わたしはなにも知らなかった。それで、よし、少し勉強しようと思って早稲田に入ったんです。

立木 そんな女の子が写大にもいたのか。さすがはわれらが写大だね。