経済・財政
安倍官邸への不信を隠さなくなった黒田日銀総裁。
財政健全化と異次元緩和めぐるジレンマの出口とは

安倍官邸とすきま風?                         photo Getty Images

就任3年目を迎えた黒田東彦日銀総裁がジレンマに直面している。

異次元の金融緩和(量的・質的金融緩和)によって「2年程度で消費者物価上昇率2%を達成する」という当初のデフレ脱却公約が実現できないことに批判が強まっている一方で、安倍政権が従来の財政健全化計画を棚上げにするととられかねない新目標の策定に強い意欲を見せ、結果的に異次元緩和の継続・強化が覚束ない雲行きになっているからだ。

市場からは容赦ない「追加緩和催促」の声

それでも、市場は、対外的な公約であるデフレ脱却を果たすため、月内にも追加緩和が必要だと容赦のない催促の声をあげている。

黒田総裁は決して口にしないが、デフレ脱却と並ぶ重要課題として、消費増税による財政健全化に耐えられる経済環境作りを目指していたはずだ。そのための暗黙の狙いとして円高是正も心中にあったはず。八方塞がりの中で、黒田総裁は、どういう舵取りをするつもりなのだろうか。

2013年3月21日の就任記者会見で、「(物価上昇率を2%に押し上げるために)できることはなんでもやる」と宣言したためか、黒田総裁がデフレからの脱却だけを唯一の政策目標としているかのような印象を持つ人が多いようだが、それは違う。その証拠に、この日の会見の冒頭で、黒田氏は優先度の高い使命として「何といっても、物価の安定」と述べた後、すかさず「もう一つはもちろん、金融システムの安定」と語っている。

その前提条件として、黒田総裁の腹の内に「財政健全化」が深く刻まれていることが垣間見えたのは昨年10月末のことだ。

翌月半ばに消費税の追加増税の可否を決める有識者会合を控える中で、「量的・質的金融緩和の拡大」(黒田バズーカⅡ)を決めた意図を問われた黒田総裁は、有識者会合の決定に関与するつもりはないときっぱりと否定しつつも、あえて「(中央銀行として)政府が中期財政計画を着実に実行していかれることは期待しています」と付け加えることを忘れなかった。

上昇を続けていた株式相場が10月に入って変調をきたし、国民の年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が債券から株式への資金のシフトを検討していた時期のことだ。本来ならば、黒田バズーカⅡを歓迎してもよいはずの首相官邸は、黒田日銀から事前の相談がなかったこともあり、財務省、厚生労働省、日銀が連携して消費増税実現に向けて外堀を埋めてきた中での苦言に不快感を抱いたらしい。この時から、一枚岩に見えていた官邸と日銀の間にすきま風が吹き始めたというのである。

安倍首相は翌11月18日の夜、首相官邸で記者会見を開き、2015年10月に予定していた税率を10%に引き上げる追加消費増税を17年4月まで1年半延期し、その信を国民に問うことを大義に21日付で衆議院の解散・総選挙を行う考えを明らかにしたのだった。黒田総裁はせっかくの黒田バズーカⅡの決定にもかかわらず、消費増税を先送りされ、「食い逃げ」をされた格好だった。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら