【有料会員限定記事】国際的な協力が野生動物の密猟や交易を食い止める鍵となる
母親を惨殺されたあとに保護されたサイの仔---〔PHOTO〕gettyimages

劇的に増加する野生動物の非合法取引

アフリカの草原では毎朝殺し屋がひそかに進む。獲物にはもはや逃げるすべはない。昇朝日のもと、仔と戯れている母を遠くから高速の銃弾が襲う。母は大地に倒れ、瀕死の傷にうめく。しかし最悪の光景はこれからだ――。

大型のナイフと斧を手に襲撃者が近づく。抵抗できない獲物は無慈悲にたたき切られる。一番希少で高額なパーツを手に入れるためだ。その数時間後、破壊された母親の死体と半ば乾いた大量の血糊のそばから2匹の仔は離れようとしない。まるで生き返るのを待っているかのようだ・・・・・・。

強欲に突き動かされたこの手の暴行は、今も世界のあちこちで少なくありません。この場合の犠牲者は人間ではなく、アフリカに生息するミナミシロサイです。威風堂々たるこの動物の角は、中国やヴェトナムなどの国で多くの需要があります。サイの角に薬効はないという研究結果が繰り返し出されている事実に反して、これら国々では高級な贈答品や慢性疾患用の生薬として多くの人に珍重されています。

サイの殺し屋は多くの場合、最新式の武器を携行し、高度な訓練を受けた準軍事的なグループのメンバーです。彼らは、地元の警察やパークレンジャーから豊富な資金を得ており、所持する銃器の性能もはるかに優れています。その結果、サイへの銃撃は近年劇的に増加し、2014年度には南アフリカだけでも12000頭に達しています。

野生動物の非合法取引はグローバル産業で、毎年何十億ドルも荒稼ぎをしています。絶滅危惧種は、食糧ペットや装飾品、家具、皮革、薬剤、化粧品に加工され、まさに消滅寸前の状態です。この非合法取引は、地球の生物多様性への深刻な脅威となっているのです。

密猟の根を絶つ方法とは

サイの生息数が激減していることからも、この問題の規模がうかがえます。南アフリカ当局によれば、2007年度のシロサイの密猟は13頭でした。この数字は問題をなんとか封じ込めつつあるのではないか、というかすかな希望を生みました。しかしアジアの裕福な消費者が急増することで、事態は急激に悪化しました。いくつかの国では、サイの角1キロは同量の金の価格を上回っています。2012年度には、南アフリカで密漁されたサイは670頭に達し、数年後にはさらに倍増しました。

アフリカの国立公園の保護や監視は問題解決へのほんの一部でしかありません。というのも密漁や取引は国境をまたぐ問題だからです。大きな利益が出る取引は、犯罪組織を惹きつけ、密猟集団を生みだします。多くの中心的な取引業者の名前が知られていますが、彼らは現状から収入を得る腐敗した役人に守られているため、刑罰を免れています。

また、波及効果も起こっています。素晴らしい生物種を絶滅させることは、地球の生物多様性を危うくするだけではなく、放置されれば法治主義を損ない、コミュニティや国全体を不安定にする可能性すらあるのです。これは、多数国間で国際的な解決を必要とする危機なのです。

この危機に対しては技術的な方法が有効です。野生動物のパトロールにはSMRT(空間的監視・報告装置)によって効果があげられる可能性があります。またドローンを活用し空中からの偵察も有効でしょう。しかし需要ががあるから供給が発生するという難問が残ります。バリューチェーン全体を視野に入れたグローバルな取り組み方が私たちには必要なのです。つまり、野生動物保護区をガードし、空港や港を偵察し、消費者の需要を根底から絶やさなければなりません。

これは、次の3つのグループ間の強力で解決できます。
まず、野生動物貿易の社会的、経済的な動態を誰よりも理解している環境保全機関。次に行動計画を実行し、効果的な国際規制の実施に寄与する各国政府、そして、イノベーションと投資、さらに責任ある行動によって変化を生みだす事ができる民間部門です。

しかし、彼らが協力関係になるには、現地のソーシャル・メディア・プラットフォームや、ほかの情報チャンネルを通じて集まった事情に通じた大衆の圧力によってのみ実現できるのです。私たちは密猟をやめさせるためには何か必要かということを知っています。

今やるべき事は、勇気を奮い起こし行動することです。それは達成可能なことであり、また私たちの責任でもあるのです。

(翻訳/オフィス松村)