浜岡原発停止の首相要請
もしも、あなたが中部電力の社長ならどうするか?

浜岡原子力発電所〔PHOTO〕gettyimages

 菅首相は、中部電力に対して、同社の浜岡原子力発電所の運転を停止することを「要請」した。これは、法律的な手続きに基づく「命令」ではない。要請を受けた段階で、運転を中止するか否かの決定は、第一義的には中部電力に委ねられた。中部電力は、随分やっかいな問題を、しかも突然に、抱え込んだといっていいだろう。

 世論を考えると、首相の要請を拒否することは難しい。しかし、この数字を前提として考えていいかどうかは留保が必要だとしても、浜岡原発の運転を停止し、これを火力発電で代替すると年間2500億円程度の追加コストが生じると報道されており、これは、年間2000億円程度の営業利益(平成20年度が連結でほぼこの水準)の中部電力にとって、突然赤字に転落しかねないインパクトを持っている。

 こうした状況で、もしも、あなたが中部電力だったら、もう少し正確に、中部電力の経営責任者であったら、どうするだろうか?

菅首相の発言は本当に「行政の意志」なのか

 たとえば、以下のような選択肢があればどれを取るか。
(1)即時、受諾。
(2)少し間を置いて受諾。
(3)決断をできるかぎり引き延ばす。
(4)断固拒否。
(5)政府と条件交渉する。

 現実に中部電力が選んだ方針は(2)だった。菅首相が唐突に浜岡原発の停止要請を言い出したのが5月6日(金)で、これを「重く受け止めて」検討に入った中部電力は、翌週開けの5月9日月曜日に取締役会を開いて、ここで要請の受諾を発表した。これは正解だったのだろうか?

 以下、中部電力経営陣が取るべき方針について、あれこれ考えてみる。

 さて、中部電力が直面した問題に戻ろう。読者の選ばれた回答は何番だっただろうか?

 問題の解決にあたって、中部電力の経営陣が考えた要素を想像すると、以下のようなものをあげることができる。

 ・首相の要請を断った場合の、世論の批判の影響。
・要請を受諾した場合に株主に説明が付くか(最悪は株主代表訴訟敗訴)。
・要請を受け入れる場合、将来行政から得られるメリットがあるか。
・要請を拒否した場合、将来行政との関係で将来不利益を受ける可能性はあるか。
・浜岡原発停止は将来の原子力発電にどう影響するか。

 実は、筆者が考える正解は(2)だ。中部電力の今回の選択は、あれこれ考えると現状における満点だったのではないかと評価する。意外かも知れないが、本当にそう思う。

 筆者が想像するに、中部電力の経営陣は、最初からこの要請を「受け入れたい」と考えていた。そもそも、電気料金をはじめとして、業務の全般を行政の管理の下に行い、同時に行政に地域独占を守ってもらっている電力会社が、行政の要請を受諾しない合理的理由を見つけることが難しい。

 一つの問題は、菅首相の発言が、本当に行政の意思を代表しているのかどうか、ということだっただろう。率直に言って、菅氏は今後長く首相の座にいないだろうから、電力会社にとっては監督官庁のキーパーソンがこの要請を受諾することを望んでいるか否かが重要だ。

 要請を受けてから、しばし検討の時間を取ったのは、会社側の手続きの問題もあろうが、行政の意向を確かめる目的もあったのではないか。事実、中部電力は、経産相(つまりは経産省)と今回の中止の趣旨と条件について5箇条で構成される文書を交わしている。

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