雑誌 企業・経営
トプコン・平野聡社長「『面白いこと』をやるのが一番いい。面白がって、自分を強く信じ、進んでいった者だけが伸びると思います」

直近3年で株価が約7倍にもなった成長企業だ。光学機器メーカーのトプコン。元はカメラ等をつくっていたが、現在は土木作業の自動化、超精密化につながる機器の開発で注目を集める。ほか、眼球の奥を3D撮影できる先進医療機器、土木作業で使う世界最高精度の角度測定機器なども開発し、「世界初」「世界ナンバーワン」の商品が数々揃う。成長の核となっている事業を苦労しながら育て上げた平野聡社長(57歳)に聞いた。

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ひらの・さとし/'57年、福岡県生まれ。'82年に東京電機大学理工学部を卒業し、トプコンへ入社。主に海外営業畑を歩み、'07年に執行役員に就任する。その後、'10年に取締役兼執行役員、'12年6月に取締役兼常務執行役員を経て、'13年6月から現職。趣味は、ゴルフと犬の散歩という庶民派 ※トプコンのwebサイトはこちら

未来

今後、世界中の土木工事が一変しますよ。以前、工事と言えばCADデータ(コンピューターで作成した設計図)を出力し、現場の作業員の方が整地する場所や、柱や杭の位置を目測で決めていました。施工も、仮に整地であればブルドーザーを動かす方が感覚と目測で行います。しかし弊社は、CADのデータとブルドーザーなどの機械の動きをリンクさせたのです。CADデータをブルドーザーに送れば、GPSの精密な位置情報を元に、ブルドーザーが自動で施工してくれるのです。すごくないですか?

600兆円

目測でないため複雑な土木工事でも、数ミリ単位の正確さで施工できます。現在は安全管理のため、ブルドーザーを無人にはできませんが、将来的には人員の削減もできるでしょう。世界100兆円産業である自動車産業の成長は、作業のロボット化によりもたらされた面があります。我々は世界600兆円と言われる土木の市場をロボット化していきますよ。社内外で「土木の3Dプリンタ」とも言われています。

前人未踏

好きな言葉は「破天荒」です。小学生の時、本田宗一郎さん率いる本田技研工業さんがF1で優勝を飾り、そのときのF1カーが、地元のデパートに展示されたんです。これを見た時「とにかくやってみる」「破天荒」「大胆」といったイメージが私の胸を打ったのです。ちなみに「破天荒」というと「無謀」といったニュアンスがありますが、本当は「前人未踏を目指す」といった肯定的な意味合いなんですよ。ただ私は、一般的に思われている「破天荒」のイメージも好きですが(笑)。

4や9

私は「逆張り」の人間です。弊社への入社は'82年。当時は「東京光学機械」という社名で、カメラに関し様々な特許を持っていて技術力が高かったにもかかわらず、二部上場企業にとどまっており、あまり目立っていませんでした。だから「面白い!」と思った。逆張りでしょ? ロッカーなどの番号もあえて、みんなが避ける4や9がつく場所を選ぶほどです(笑)。

仲間と アメリカに駐在していた時の仲間とともに。前列の中央が平野氏。'98年、赤字を脱却した時期の写真だ

青春

「面白いこと」をやるのが一番いいですよ。'94年に「アメリカでブルドーザーの自動化を視野に入れたベンチャー企業がある」と、私の親友でもある現地社員(現在の事業責任者、レイ・オコナー氏)から聞きました。これを買収し、当時の上司(前社長の内田憲男現相談役)が現地へ乗り込み、私は1年半後に経営陣として渡米しました。

当時私は38歳で、レイは33歳、未熟な二人を本社が最大限サポートしてくれたのですが、その後3年間、経営は赤字でした。水前寺清子さんの曲の歌詞から「ぼろは着てても心の錦♪」と自分に言い聞かせ、現地の銀行に行き「売り上げは急激に伸びている。研究開発費が膨大なだけなんです」と必死で訴え、与信枠の拡大を求めたこともありました。振り返れば、面白がって、自分を強く信じ、まだ誰も信じてくれない未来へ進んでいった者だけが伸びていくような気がします。