イギリスの春の風物詩。200年続く、オックスフォードvsケンブリッジの熱いボートレース

これまでは、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の共通点を中心に語ってきたが、今回は両校の熱い戦いについてお話ししたいと思う。毎年3月の最終週もしくは4月の第1週に行われる、オックスフォード対ケンブリッジのボートレースは、「春を告げる伝統の一戦」と呼ばれている。日本で「ボートレース」というと、公営競技の競艇を想起する人が多いかもしれないが、英国におけるボートレースとは、モーターボートではなく、いわゆるレガッタ競技のことである。決まった人数でオールを使ってボートを漕ぎ、一定の距離で順位を競うスポーツだ。

200年近くも続くBattle of the blues (青同士の戦い)

日本で言うところの早慶戦のようなライバル校同士の戦いをイギリスではVarsity (ヴァーシティ)と呼ぶ。Varsityとは、元々は学校対抗戦というような意味の単語であるが、一般的にはオックスフォード大学とケンブリッジ大学の代表戦を指すことが多い。実はこの2校、双方共にスクールカラーが青なのである。しかし同じ青でも色合いは大分違い、オックスフォードが紺に近い深いブルー、ケンブリッジがエメラルドグリーンに近い明るいブルーである。このことから、ヴァーシティは「Battle of the blues (青同士の戦い)」 などと呼ばれることもある。またオックスフォード側のメンバーのことを“Dark Blues”、ケンブリッジ側のメンバーのことを”Light Blues”と呼ぶ。伝統として、前年度に負けたチームが勝ったチームに挑戦を申し込みに行くことが決まりとなっている。

この2校のボートレースは、1829年から200年近くも続いている伝統ある戦いであり、両校関係者のみならず、ロンドン市民や観光客を沿岸に集める一大イベントとなっている。決戦の地(というか川) はロンドンの中心部を流れるテムズ川で、コースはパットニー(パットニー橋付近)からモートレイク(チズウィック橋付近)までの全長4マイル374ヤード(約6.8キロ)で争われる。レース艇は時速約20kmでこのコースを進むため、レース自体は大体20分くらいで終わってしまう。とはいえ、伝統的にどんなに悪天候でも中止・延期は基本無し、ということになっているため、年によってレース時間は大分変わってくる。現在のベスト・タイムは、1998年にケンブリッジ大学が出した16分19秒。また最も遅い優勝タイムもケンブリッジ大学の記録で26分5秒となっている。

イギリス中の人の春の風物詩

レースが始まるのは夕方の16:30であるが、テムズ川沿いには早朝から場所取りをする人達で溢れかえっている。川岸に大型ビジョンも設置されるなど、多くの人が観戦できるようになっている。特に川沿いのパブは大盛況で、2階席から高みの見物をする人達も多い。毎年大体25万人程の人が川沿いに集まり、2009年には27万人という最高記録がある。この伝統の一戦はテレビでも必ず中継され1,500万人以上に視聴されており、ロンドンのみならずイギリス中の人の春先の風物詩となっている。またBBCはこの模様をイギリス国内だけでなく、150ヵ国以上で放映する、という大規模な催しである。

レース中は、テムズ川の北側にオックスフォード、南側にケンブリッジの学生が陣取って応援する。応援といっても、日本のような応援団がいるわけでもなく、校歌や応援歌を歌ったりするわけでもない。ただひたすら、「ケンブリッジ」「オックスフォード」と叫ぶ。せいぜい、学校名の前にカモーン!をつけるくらい。日本の学校対抗戦に慣れていると、少し物足りなく感じるかもしれない。とはいっても、観戦者の多くはどちらかの学校の応援をするでもなく、ただ盛り上がって観ている、という人が多く、このお祭り騒ぎの雰囲気をビール片手に楽しんでいる、という感じ。ピクニックのように何時間も前から観戦場所を陣取っている人が多いが、川岸にいる人からすれば、両校のボートが自分の目の前を通りすぎるのは一瞬のできごと。その直後にメディアのボートや、警察の船が一斉に追いかけて行く様子も印象的である。