【有料会員限定記事】一軒のすし屋のために休暇を取る贅沢
---予約の取れない寿司屋・その2

〔PHOTO〕gettyimages

=> その1はこちらをご覧ください

本コラム、“その1”では、1年半先まで予約が埋まっている四谷の「三谷ワールド」を途中まで紹介した。これで「1年半先でも構わないから予約をしよう」と思わせる魅力の一端をわかっていただけたのではないかと思う。今回はその「三谷」の後半をご紹介するが、その前に前回までの料理を軽くおさらいしたい。

まず1皿目は、鯛の白子とキャビアのペーストに、3日間放置して泡を抜き蜂蜜香を際立たせたシャンパンを合わせる。次は、同割で割った赤ワインと米酢のエキスにまぐろの赤身を漬けた一品。これは日本酒「十四代」の「たつのおとしご」でいただこう。そのあとは、炙ったかつおの皮側には塩を、身側にはしょう油を付けた一皿にブルゴーニュワインポマールを合わせた。そして4皿目。毛ガニのみそスープにカニのほぐし身を入れて日本酒「東一」を。

まあ、ここまでで大抵の人はそのうまさにやられてしまう。今まで食べてきた毛ガニやまぐろ、かつおの概念が覆され、充足感が浮かんでくる。

さて、それでは、後半の皿を紹介しよう。

肴はもちろん合わせる酒もまた逸品

5皿目は、アツアツの昆布だしに、生の烏貝をさっとくぐらせた「しゃぶしゃぶ」だ。
春の烏貝は貝の王様ではないかと思う程に滋味深い。軽く熱が通り濃くなった甘みが半生の烏貝からまるで果物のように流れ出す。酒は貝に合うといわれる、「マカベオ」というブドウの品種とシャルドネを合わせたスペイン産の白ワイン。貝のミネラルと実によく調和する。そのあとは昆布出汁にさっと生ウニを入れていただく。これもまたほんのり温まって香りと甘みが増し、陶然となるような味わいだ。

次は、塩を抜いたからすみの上に赤ウニを混ぜて炊いたご飯のおこげを乗せ、軽く焼いた肴だ。チーズのミモレットを思わせるアミノ酸の濃さ、うま味の相乗である。分厚く切られているが、一切れをいつまでも食べ続けていたいと思わせる、目くるめくうま味の波状がある。これには丸い味わいのある日本酒「遊穂」を合わせるという算段だ。

7皿目は子持ちの蝦蛄。蝦蛄とハマグリのスープに浸かりしっとりとなった子がたまらない。この料理もまた凝縮したうま味ある味わいだ。そこににごり酒を合わせれば、途端に味わいが色っぽくなる不思議がある。

8皿目は、金目鯛の脂を使った「赤酢飯のリゾット」。金目鯛の脂はまったりとしているが品が良い。過熱された酢が酢飯のうま味に変わり、脂の甘みと手をつなぐ。これに合わせるのはシャンパン、「LAUNOIS」(2005)だ。エレガントな香りが金目鯛を貴婦人に変える。

そして最後は鯛のだしに入れた鯛の卵巣という肴だ。卵のつたなく優しい甘みが、滋味深いだしの中でそっと息づき、ため息が出るほどおいしい。人の手がかかっていることを感じさせない神秘的な味わいだ。そこに味のまろやかな酒「若駒」無加圧絞り生原酒を合わせる。

9杯も飲めばかなり酔っ払ってしまうと思うだろうが、お客さんそれぞれの酒量に合わせて、少しずつ出してくれるので心配はない。

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