皆があきらめてしまっていた行政の決定をくつがえした市民発の動きとは? 兵庫県西脇小学校の木造校舎の補修保存をめぐるキャンペーン事例
西脇小学校の木造校舎の存続を求めるキャンペーンを成功させた吉田稔美さん

「ほぼ決定」だった木造校舎取り壊し

「変えたい」 という気持ちを形にする、ソーシャルプラットフォーム「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」のキャンペーン発信者へのインタビュー連載第4弾は、ローカルでの成功事例を取り上げる。兵庫県西脇市立西脇小学校の木造校舎の補修保存を嘆願した署名キャンペーンを振り返り、東京以外の地域における活動のヒントを探る。

今回取材したのは、「木造校舎を残してください! 兵庫県西脇市立西脇小学校 補修保存の嘆願」というキャンペーンの発起人である東京在住のイラストレーター・絵本作家の吉田稔美(よしだ・としみ)さん。同校の卒業生として、数名のメンバーとともに補修保存を目指して活動した。行政によって取り壊しが「ほぼ決定」だった状態をどのように変えていったのか。キャンペーン成功の裏には、市民発とは思えないいくつものアクションがあった。

〈 耐震性や老朽部分、夏の暑さ冬の寒さの問題等で検討され、補修には9億円、新築の場合にはそれ以上の10数億円かかるとの試算が出たのですが、補修をしても数10年後に再補修の可能性があること等を主な理由に、取り壊してコンクリート校舎に新築されることがほぼ決定している。 〉

2013年7月10日、神戸新聞北播版が上記のような旨の記事を報じた。昭和12年に建設された2階建て3棟の美しい木造校舎は、映画『火垂るの墓』などのロケでも使用。平成19年には兵庫県の景観条例に基づき、景観形成重要建造物に指定されている。そんな「校舎の取り壊し」のニュースを兵庫県・西宮に住む友人経由で知り、まさに寝耳に水の出来事だった。

「2010年には西脇市内で行われたアートイベント<GAW展>に参加し、同校の図書室で紙芝居を実演したばかり。そもそも『なんで?』と思いました。旧友らに連絡してみましたが、みんな知りませんでした」。8月下旬に説明会を開催、9月の市議会定例会で最終決定という計画。ほとんど期間が残されていなかったが、動き出すことにした。

報道から2日後の7月12日、広報課を通じて市長と校長宛に保存補修の嘆願意見書をメールで送付。行政の担当者とつながっていたのは、吉田さんは高校生のときに「西脇市市政25周年公募<日本のへそ>シンボルマーク」に最優秀賞として採用されたことがあったからだ(現在は市のマークとして使用されている)。

「まずは止めないと、と思いました。いまの木造校舎で本当に耐震化できないのか。数日後には問い合わせと意見書も送り、教育長から説明を受けることに。しかし、全4回の検討委員会で、木造建築に通じた建築家など専門家が参加していないにもかかわらず、耐震化できないと結論づけられていたことや、議事録が未公開であることにも疑問を持ちました」