これが「美しい国」なのか
~『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より

〔PHOTO〕Thinkstock

安倍政権が昨年秋の臨時国会で成立を断念したカジノ法案が、また提出されそうだ。
カジノは自民党が成長戦略の目玉に掲げているから、当然予想された動きだが、本当にこんなものを通して良いのだろうか。

カジノを熱望しているのは、実は、霞が関の各省庁もまた同じだ。もちろん、狙いは新たな利権作り。

カジノができれば、賭け金や収益など、巨額の資金が動く。規制のさじ加減一つで、そのカネの流れが大きく変わるので、規制官庁は大きな権限、すなわち利権を手中にすることになる。こんなにおいしい話はない。

カジノ法案制定に関わる主な省庁は、内閣府(主務官庁)、厚生労働省(ギャンブル依存症対策)、国土交通省(国際観光振興)、警察庁(取り締まりなど)だ。

すでに利権狙いの伏線を張る動きもある。厚労省は'14年8月、ギャンブル依存症の疑いのある国民が536万人もいるとの推計を突然公表した。一見、カジノ法案反対の動きに見えるがそうではない。ギャンブルの害毒を世間に印象づけてカジノ法案成立後に依存症対策予算を獲得し、その対策のための新しい組織を作って、新たな天下り先を獲得するための周到な計画だ。

カジノ法案には国民の反対が非常に強い。しかし、カジノ利権は、政治家、官僚双方が喉から手が出るほど欲しているだけに、時期は別として、成立への動きは止まらないだろう。

確かにカジノは莫大な利益を生み出す金の卵かもしれない。海外から大勢の観光客を呼び込もうという皮算用もされている。

しかしその一方で、ギャンブル依存症拡大、多重債務者増加、マネーロンダリングの温床、青少年への悪影響、治安悪化などの副作用がつきまとう。

日本には優れた観光資源が豊富だ。四季折々の豊かな自然、和食、アニメ、原宿ストリートなどに代表される「カワイイ」文化、さらにはおもてなしの心など、いわゆる「クールジャパン」に心魅かれる外国人は多い。そうした日本独自の観光資源とは真逆のカジノを、ただ「儲かる」という理由だけで作るのは、あまりに軽率ではないのか。

海外では、安易なカジノ誘致で失敗し、カジノが破綻するだけでなく、町全体が廃墟のようになってしまったところもある。

大切なのは、日本の将来について論議を尽くし、そのあるべき姿を骨太に構想することである。その上で、海外の真似をするのではなく、もっと自らの自然や文化に誇りをもった成長戦略を策定すべきだ。「日本人の生き方」が問われる問題だと言ってもよい。

安倍政権の成長戦略は結局不発のまま。農業改革も医療改革もお茶を濁すような小さなアリバイ作りに終始している。電力改革も遅々として進まないどころか原発推進・自然エネルギー冷遇に舵を切った。

安倍総理が描く「美しい国」は、「武器輸出大国」、「原発輸出大国」、そして「ギャンブル大国」の日本ということだ。

それは、私たち国民が考える「美しい国」とはかけ離れているのではないか。私たちは、外交安全保障だけでなく、成長戦略でも、「I am not ABE」と叫ばなければならない。

『週刊現代』2015年4月11日号より

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