桜を愛でる国の幸せ
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春は一年のなかでも日本中がもっとも華やぐ季節です。桜の開花が冬の終わりと春の訪れを告げ、着慣れないスーツを身にまとった新社会人たちが街に溢れ、明るく新鮮なエネルギーが満ち溢れます。

ところで、毎年思うのですが、桜というのは実に不思議な植物です。一年のうちにたった一度だけごく限られた短い時間に限って華やかな花を咲かせ、その後はさっと散ってしまいます。

花を付けている間は、私たちを前向きで元気な気分に高揚させ、生命力を限りなく高めてくれるような気がします。一方で、花が散るときには人生のはかなさとも重ねあわせて、感傷的な気分をたっぷりと味あわせてもくれます。葬儀の時のお坊さんの講和のなかでも「散る桜 残る桜も 散る桜」という良寛和尚の名句がよく引用されます。「生命の輝き」と「はかなさ」をこの一句のなかで三度「桜」を使うことによって、余すところなく表現し尽くしているように感じます。

花見客でごったがえす上野公園---〔PHOTO〕gettyimages

毎年、桜の開花を待ち焦がれ、開花とともにお祭り騒ぎをして、散る桜を見ながら人生のはかなさを思う――こんな植物は桜以外にはなかなか思いつきませんし、このような植物を愛でる習慣のある日本人はとても幸せだと思います。さらに付け加えると、桜は、少なくとも一年で三回、私たちを楽しませてくれます。花が散ったあとの新緑の美しさは格別ですし、秋の紅葉も見事です。

昨年、日本を訪れた外国人の数が1300万人を超えましたが、今年はさらにその数を上回りそうな勢いです。花見客のなかには外国人も増えているそうですが、観光局や旅行会社のプロモーション効果もあり、最近では日本の花見は海外でも広く知られるようになりました。花見を目的としたツアーも増えているようです。

日本の文化はこの桜という植物なしでは考えられませんが、これからも末永くこの桜という植物を大切にしてしていきながら、海外の人たちにも、日本の文化の奥行きを、この桜の素晴らしさとともに広く伝えていきたいものです。