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【第82回】 2015年度の日本経済強気シナリオが根拠を失いつつある!
〔PHOTO〕gettyimages

日本の企業経営者の多くは日本のデフレ解消について懐疑的

いよいよ新年度である。4月1日には、3月の日銀短観が発表された。正直言って結果はよくなかった。特に筆者は、10月31日の「ハロウィン緩和」が為替レートを1ドル=120円近傍まで下落させたことのプラス効果が意外と大きいのではないかと考えていたので日銀短観の結果には失望した。

筆者が今回の短観で注目していたのは、今年度(2015年度)の設備投資計画である。「ハロウィン緩和」以降、日本を代表する大手の輸出企業が設備投資の国内回帰の方針を打ち出したとのニュースが次々と発表されたことから、2015年度は製造業を中心に国内の設備投資が本格的に復活する年になるのではないかと期待していた。だが、日銀短観の2015年度設備投資計画の結果は過去(2000年度から2013年度)の平均(大企業)、及び平均をやや下回る(中小企業)伸びにとどまった。

設備投資は資本ストックとして長期的に稼働させて初めて採算がとれるので、特に輸出企業で、経営者が、国内生産の方が、海外現地生産よりも生産・販売コストが低下する状況、すなわち、円安局面が長期間安定的に(現状の1ドル=120円程度の円安局面が)続くと確信が持った場合に、国内の配分が増えることになる。

もちろん、為替レートを長期にわたって正確に予想することは不可能である。企業の経営者は、長期的な為替水準自体を予想するというよりも、どうしても足元の状況に左右される傾向が強い。そのため、実際は、足元の為替レート水準がどの程度かが長期的な為替レート水準を考える際の重要なポイントの一つとなると考えられる。

筆者は、「ハロウィン緩和」によって、ドル円レートが、それまでの1ドル=105~110円程度の円安から1ドル=115~120円程度の円安水準に変わったことで、企業経営者の為替レート見通しが大幅な円安に傾いたのではないかと考えていた。そして、これが、輸出企業が設備投資をより国内に多く配分するきっかけになるのではないかと考えていた。

だが、今回の短観の2015年度の為替レート前提は1ドル=111.81円であった。昨年12月の短観での2014年度下期予想が1ドル=103.99円だったことを考えると、多くの製造業が為替レート予想を円安方向に修正したことは確かだが、現状の為替レート(1ドル=120円前後)との乖離はまだまだ大きい。

さらに、為替レートは長期的には、購買力平価(相手国との物価水準の格差によって為替レートが決まる)に収斂する傾向が強い。そして、その「購買力平価仮説」に基づいて長期的な為替レートの動きを予想するとすれば、今後、相対的に物価の上昇ペースが早い(すなわち、よりインフレ圧力が高い)国の通貨が減価する(安くなる)ことになるため、企業経営者がどのようなインフレ予想を抱いているかが重要なポイントとなる。

そこで、企業経営者の抱くインフレ予想を示す「販売価格判断DI(企業が提供する財・サービスの販売価格の見通し)」をみると、これは、昨年12月から悪化しており、企業経営者の将来のインフレ予想は後退を続けていると推測される。「購買力平価」との兼ね合いで言えば、企業経営者は、昨年の消費税率引き上げ直前までの日本のデフレ解消の流れは、今後も戻りそうにないと予想しており、購買力平価を円高方向に誘導しかねない要因になりうる(ただし、米国企業のインフレ予想は一定と仮定した場合の話である)。

以上より、輸出企業を中心として日本の企業経営者の多くは、日本のデフレ解消については依然として懐疑的であり、その結果、実際のドル円レートよりも為替レートの将来予想を慎重に見積もっていると考えられる。これは、2015年度の設備投資計画が、期待ほど拡大しなかったことと整合的である。今回の日銀短観の結果を踏まえると、企業は足元の経済環境や同業他社の動向をみながら、設備投資の判断を慎重に下していくというスタンスを続けると考えられる。その意味では設備投資が国内景気を牽引していくとは考えにくい状況となってきたのではないか。

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