【有料会員限定記事】IT界のオピニオンリーダー、ティム・オライリー「モノのインターネット(IoT)」を語る/クエンティン・ハーディ
2014年、ダブリンで行われたwebサミットでのティム・オライリー氏---〔PHOTO〕gettyimages

ティム・オライリーはインターネット技術が商用化されて以来、インターネット界の先頭を走り続けている人物だ。その実績は本物である。彼は1993年8月、さまざまな情報やカタログ、商品売買の場を提供するウェブサイトである「グローバル・ネットワーク・ナビゲーター(GNN)」をリリースした。GNNは世界で初めてインターネット広告を掲載したサイトである。

2004年には、「Web 2.0」という言葉を世に知らしめた。「Web 2.0」はドットコムバブル崩壊の以前と以降を分けた概念である。崩壊後のウェブをソフトウエア開発の新しいプラットフォームとして位置付けている。ここで言うソフトウエア開発とは、大勢の開発者と顧客を上手に管理するための高速データ処理のことであり、インターネットにおいて決定的に重要な技術だ。「Web 2.0」と言う名のカンファレンスも盛況を究め、ドットコムバブル崩壊後におけるシリコンバレーの復活の代名詞となっている。その後、出現することとなるグーグルやフェイスブックの先触れともなった。

自らの名前を冠する会社を起ち上げ、出版とカンファレンスのビジネスを行っているティム・オライリーは、「モノのインターネット」(IoT=Internet of Things)は、現在、インターネットにおけるもっとも重要な成果ではないかと語った。またこの言葉は、多少誤った使われ方をしているとも述べている。というのも本来IoTとは、人々にコンピューター機能へのよりよいアクセスを促すものだからだ。彼はIoTをテーマにしたカンファレンスを運営しており、この6月でまる2年を迎える。

IoTの将来、問題点についてオライリーに語ってもらった。以下はその要約である。

Uberも十分にIoTである

〔PHOTO〕gettyimages

――多くの企業が、あらゆる種類のデバイスをインターネット化することで、効率化を図ろうと考えています。企業のこうした取り組みこそが、IoTであると考えてよいでしょうか。

オライリー: IoT が本来持つ機能は人間の拡張です。IoTは多彩です。意思決定を左右するセンサーやデータによって変わってきます。

――具体的な例を、あげてください。

オライリー: 位置情報を利用したビジネスを展開する「Uber(ウーバー)」という会社があります。Uberは、リアルタイムの位置情報を使い、タクシー運転手の機能を拡張しています。またUberを利用する乗客は、タクシーが来るタイミングを(スマートフォンで)予測しており、その意味で自らの機能を拡張していると言えます。Uberは余分な時間や不安を取り除いているわけです。

仮に自動運転でタクシーが走っていれば、それを見た人は、これこそがIoTだと言うかもしれません。しかし現在のUberでも、十分にIoTなのです。IoTはあらゆるモノを測定、検証し、そして劇的に変化させます。IoTは、ハードウエアとソフトウエアをさまざまな種類の“モノ”に差し込むことを可能にする技術なのです。

――しかしIoTは、単なる双方向通信をするセンサー、あるいは遠隔操作ができるクラウドサーバー、もっと具体的に言うと、運転手と乗客がスマートフォンを使って情報をやりとりするだけのシロモノではありませんよね。今後はさらに、無数のデータを処理し、それをフィードバックさせるループのようなものとなっていくのではないでしょうか。

オライリー: 偶発的に変化する“モノ”に対し、適切なデータを探すというのがIoTの能力の特徴です。つまり、オンデマンドなのです。またIoTはシステム全体を周知しており、負荷を分散させます。こう言うと、渋滞緩和を目的に通行料を課金するコンジェスチョン・プライシング(渋滞料金)を思い描くかもしれません。しかしIoTはそれよりもさらに、状況に対し柔軟な世界です。最良な状況を見極めるシステムなのです。

――なぜIoTが、人々にきちんと理解されていないとお考えなのですか。

オライリー: センサーのようなものだけでなく、IoTによって何が可能になるのかということを、私たちが十分に理解しようとしていないからです。人、インターフェイス、機械が相互に通じ合うためには、複雑性を克服しなくてはなりません。ここで考えなくてはならないことは、「機器から人への連関のフィードバックを、どのようにクリエイトしていくのか」という問題です。

――今後、ビジネスはIoT から何を学んでいくとお考えですか。

オライリー: 新しい技術に出会った時、私たちは確実なことを実践しようと考えます。つまり過去の似たような事例をひっぱりだして、それを効率化しようと考えます。インターネットが登場したときも、グローバル・ネットワーク・ナビゲーター(GNN)では、新聞広告をまねた広告をウェブ上に掲載しました。その後、グーグルが検索連動型の広告を生み出しました。それはまったく異なる手法の広告でした。グーグルの広告は、データにより焦点を当てたものだったのです。現在、ソーシャルネットワークでは、ソーシャル型の検索広告を利用しています。これらのビジネスモデルは、技術とより親和性の高いものとなりつつあります。

Uber(ウーバー)は、IoTを利用した初期のビジネスモデルと言えます。これからは、よりふさわしいビジネスが生まれてくるでしょう。

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