論説「大阪都構想『住民投票』で問われるのは、大阪の大都市の将来についてだ」 ―藤井聡氏の「7つの事実」に反論する― 
【前編】

1.住民投票の価値を大切にしよう

全国的に注目を集めているのが、5月17日の215万人による日本初の大規模な「大阪都構想」をめぐる住民投票についてである。国会、地方議会など代表を通じてしか決められなかった自分たちの行政の仕組みを、初めて1人ひとりの1票で決められる。この前例のない場面が生まれたのは、東京以外でも「都」という制度を採用できることを国会が認めた大都市地域特別区設置法(以下、大都市法と略称)の制定によるもの。

筆者の佐々木信夫・中央大学大学院教授

その法律の中に「特別区の設置について選挙人の投票に付さなければならない」(§7)、「有効投票の総数の過半数の賛成があったときは、総務大臣に対し、特別区の設置を申請することができる」(§8)と書いてある。

5年ほど前に地域政党・大阪維新の会により産声を上げた「大阪都構想」が国の法律を変え、日本の大都市の仕組みを自ら住民が変えることができるようにした。

それ自体が、日本の民主主義にとって特筆すべきことだが、さらに今回、20ある政令指定都市の枠から抜け出して、東西に「都」という制度をもつ大都市を大阪市民の手で生み出す判断をするなら、大阪という地域から自らの地域と日本を変えていけるのだという、大きなメッセージを全国及び世界に送ることになる。

つい先日、イギリスから独立しようと住民投票を求めたスコットランドの事例を上回る出来事として注目を集めよう。それだけに、今回の住民投票は、住民の方々に正確な判断材料と将来方向を示すビジョンをしっかり届けなければならない。それが公共分野を預かる政治の基本的な役割なはずである。

しかし、現実をみると、些末な情報を流す政党間の足の引っ張り合い、それに乗じて曲解、無理解、間違いだらけのデマや宣伝を流し続ける者まで現れる始末。マスメディアも政争に巻き込まれたくないとの認識からか、報道自体を縮小する。これでは、せっかく投票に行こうと思っている人たちですら、嫌気がさしてしまうのではないか。

人口減少期に入った日本、いつまでも東京一極集中を放置する時代ではない。多極分散型国家の形成、とりわけ東京以外の地域(特に大阪はその拠点)を伸ばしながら、日本を職住近接の豊かさの実感できる「ゆとり社会」の実現を願う一行政学者として、都市行政学を専攻する立場からみて、あまりにも間違った大都市制度の理解をし、市民の方々にミスリードを与えてしまう危険性を強く感じたので、あえて筆を執ったところである。