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「農業特区」に見切り? 
農協不要論の「新鮮組」岡本社長が、愛知・田原市長選出馬の意味

売上高で日本最大の農協はどこかと聞かれ、農協関係者以外で答えられる人はおそらくいないだろう。正解は愛知県田原市にある「JA愛知みなみ」だ。

田原市は、先端に伊良湖岬がある渥美半島に位置する。温暖な気候で、ブロッコリーやキャベツなどの日本有数の産地だ。菊の栽培も盛んだ。当地の「電照菊」(温室内で電灯の光を当てながら促成栽培する菊)は社会科の教科書で紹介されたこともある。菊は葬儀で用いられることなどから年中需要がある。

この田原市には、トヨタ自動車本体で国内最大の田原工場もある。同社の最高級ブランド「レクサス」のマザー工場だ。

「農協職員のための農協は不要」が持論の市長候補

裕福な農家が多いことと、「トヨタ効果」によって、田原市はとても豊かな地域である。一方、裕福な田舎にありがちな排他的、保守的な土地柄でもある。筆者は、今から23年前、新聞記者としての初任地が田原市に隣接する豊橋支局だったご縁で、今でも農業関係の取材に出向くことがある。

岡本重明「新鮮組」社長

この保守的な土地柄で、約30年前から農協不要論を唱えてきたのが、有限会社「新鮮組」の岡本重明社長(53)だ。

野菜のほか大規模稲作を展開し、今ではタイやインドネシアでコシヒカリ栽培の指導もしている。

最近でこそ、安倍政権の農業改革によってJA全中の権限が剥奪されるなど、農協のあり方を巡って国民の注目が集まったが、こうした地域で30年近く前から農協不要論を正々堂々と唱えていたこと自体が珍しい。

岡本氏が唱える農協不要論のポイントは、「農家や地域の発展のための農協なら必要だが、農協職員のための農協なら不要」という点にある。

農協は、専業農家ではない職員の安定的な就職先として、寄らば大樹あるいは公務員的な仕事をする組織であるならば不要ということでもある。この考え方は今でも首尾一貫している。

若いころから岡本氏は、販売増とコスト管理を意識して、農協に頼らず野菜の販売先を自分で開拓し、借り入れも農協ではなく事業計画書を書いて都市銀行などから借りてきた。

土の改良剤やトラクターの爪など、農協・メーカー経由で買えば高いものを回避するため、自らリスクを取って海外に出向き、品質は同等で価格が安い資材を仕入れてきた。そして、それを自分が使うだけではなく販売するビジネスも手掛けてきた。

たとえば、花き農家が農薬の効かないウィルスに悩んでいることを知ると、欧米では使用が求められている「二酸化塩素」を輸入して2009年から販売を始めた。これは耐性菌を生まない消毒薬で、日本でも滞留性が少ないとして食品添加物として認められている。岡本氏は農水省に農薬として登録が必要な農薬ではなく、水を殺菌する資材として販売に踏み切った。病気に苦しむキク農家から高い評価を受けた。

営利事業だけではなく、岡本氏は自分が持つ水耕栽培の特許技術を地元で障害者を雇用しているNPOや山口県内の福祉法人に貸している。この水耕栽培で作った野菜を販売することで身障者らの自立に少しでも貢献したい考えだった。

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