「見える手」による株高トレンドの死角とは
                                                                                                                    photo Thinkstock

ターゲットは一段高の「2万100円」?

アダム・スミスの有名な言葉に「見えざる手」がある。そして現在、安倍晋三首相のアベノミクスの「官製相場」は株式需給に直接訴える「見える手」によって上昇トレンドにある。

売リ方の買戻しを誘うべく海外のヘッジファンドなど短期投機筋が4月からの新年度を前に日経平均株価2万円大台回復を視野に入れつつあるという。アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略の中でも岩盤規制改革に懐疑的だった海外の年金基金など機関投資家も日本株買いに傾斜してきている。加えて、国内機関投資家の買いが色を添えている。

3月末年度内の「2万円相場」の声は必ずしも強くなかったが、先週1週間の上げ幅が300円超へと拡大、買い遅れた長期機関投資家の焦燥感を募らせ15年ぶりの1万7500円回復を後押しした。まさに日本株「持たざるリスク」の覚醒である。

ところが3月26日、東京株式市場は米国景気の先行き不透明感や外国為替市場の円高ドル安進行に嫌気し、日経平均株価は270円超下げの1万9500円割れとなった。調整段階に入った感がある。

それでも某外資系証券会社幹部は「日経平均は25日移動平均(1万8861円)を下回らない限り、上昇トライ相場が続く。テクニカル分析によれば、2004年当時の高値の2万100円が次のターゲットだ」と、一段高を予想する。

6月までは、アベノミクスに死角なし?

日本株上昇トレンドの持続性は、①公的・準公的資金による好需給、②円安と原油安による8兆円規模の交易利得、③一部上場企業の業績拡大、④賃上げによる消費回復―などで担保されつつある。特に海外長期投資家の先回り日本株買いは、圧倒的な好需給による日本株の根強い先高感を背景としている。

だが、彼ら外国勢は日本国内の年金基金や機関投資家の投資行動をウォッチしているのだ。

日本株を日本人自らが買わなければ信用できないというのである。しかし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を筆頭に、国家公務員共済年金(KKR)など共済年金御三家、ゆうちょ銀行、そして日銀など公的・準公的資金の買いに加えて、株主資本利益率(ROE)向上に伴う企業の自社株買いが日経平均株価の底上げを支えているのだ。

GPIFの資産配分見直しは来年度末まで続き、今後1年間に約8兆円の資金が投入される可能性がある。さらに日銀が保有する株式の時価は、3兆円規模の上場投信(ETF)を含め10兆円を突破したという。そして2年目を迎えた少額投資非課税制度(NISA)の買いも控えている。

一方、批判する向きもあるが(『日経新聞』の名物コラム「大機小機」)、今年4~5兆円規模が見込まれる企業の自社株買いが強力な相場支援材料になっている。もっとも旺盛な日本企業の自社株買いといっても、米国のそれは円換算で月間10兆円規模と桁違いである。いずれにしても、自社株買いは今後も増えていくことは間違いない。

先に挙げた原油安による交易利得は8兆円に達し、消費税3%分に相当する。これはコスト削減となって企業の業績拡大に寄与する。また、ここに来て円安3年目の輸出持ち直しもある。こうした業績拡大が企業の設備投資など前向きな投資を増やし、実質賃金見通しがプラス幅を広げ、個人消費が刺激される。所謂「経済好循環」が促されることになるのだ。

設備投資については、筆者が信頼する野村證券金融経済研究所シニア・リサーチ・フェローの海津政信氏も、企業収益の回復と円安、法人税引き下げによる国内の立地競争力の回復で増加すると見ている。同氏の予想では、15年末の日経平均株価は2万500円、円は1ドル=125円、10年債利回りは0.6%とする。

こうして見てみると、何やら良い事尽くしのように思えてくる。本当にアベノミクスに死角はないのだろうか。当面は、6月の骨太方針・成長戦略に残る雇用、医療の規制改革やTPPが盛り込まれるかどうかである。

先述の外資系証券幹部は「もはや日本株を取り巻く環境に死角は見当たらず、日経平均2万円は単なる通過点にすぎない」と述べたが、半信半疑ながら今なお耳に残る。
 

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