23歳の社会起業家、物流インフラで「BOPペナルティ」解消へ
貧困地域に商店を立て、お祝い品を贈呈する加藤さん(写真中央)

発展途上国の貧困地域が抱える問題「BOPペナルティ」を改善するため、物流インフラを構築する動きが起きている。ミャンマーの都市部と僻地を結ぶライフラインを築き、お米や油、石けんなどの生活用品を適正価格で届ける。この事業を行うのは、昨年12月、単身でミャンマーに渡った23歳の社会起業家、加藤彩菜さんだ。

BOPペナルティとは、貧困層であるがゆえに被る不利益のことを指す。都市部から離れた貧困地域、特に僻地で暮らす人々は、交通・物流コストが高い。村の商店は小ロットで仕入れるので仕入コストが高く、商品の品揃えも良くない。

その結果、適正価格で食料品や生活用品を購入できず、薬など緊急時に必要なものまで手に入らないことがある。さらに、村人は自分が生産した農作物などの販売ルートが限られており、仲買人に安く買いたたかれ収入が低い。

村人は生活を成り立たせるために、親兄弟が外国に出稼ぎに行ったり、生活コストを抑えるために、子どもに学校を辞めてもらうケースも多いのが現状だ。

生まれた場所で不利益を被るというこの課題に挑んでいるのが、ボーダレス・ジャパン(東京・新宿)の加藤彩菜さんだ。加藤さんは、2014年4月に入社した新入社員で、2014年12月に単身ミャンマーに渡った。

加藤さんが行う事業は「Borderless Link(ボーダレスリンク)」。現地で雇用したスタッフとともに、都市部でお米や飲料、油、石けんなど約90種類の生活用品を仕入れ、3.5トントラックをいっぱいにして村々へ運ぶ。商店のない村には村人とともに店を立ち上げ、すでに商店がある場合は、卸売りをして、村人に商品を届けている。

現在は、ロンコン村など4つの村に商品を運び、約200家庭が村々の商店を通して商品を購入している。今年9月までに、21の村、約1000家庭に利用してもらうことを目指している。食料品や油が主に売れており、今後は携帯電話や肥料など高価な商品も割賦で買えるようにする。

サービスを導入したロンコン村の人々は、「Borderless Link」のおかげで収入の10%以上を節約できるようになった。その分は、食料品や生活必需品の購入、学費などに使われている。ロンコン村は、市場のある都市部から歩いて約2時間。市場も5日間に1度しか開催されない僻地にある。

「Borderless Link」は、農村部に商品を運び、適正価格で販売するだけではない。トラックで商品を各商店に届けた後、村人たちが生産した農作物などを荷台いっぱいに載せて、都市部や他の村々を周る。これまで売り先を持てず収入が安定しなかった農家に、農作物を適正価格で販売する方法を提供する。

トラックの往路では、農村部の人々の「生活費を削減」し、復路では「収入を増やす」このモデルを、将来、世界中に拡大してきたいと、加藤さんは意気込む。

村の子どもたちと

「1秒でも速く現地に」

加藤さんが国際協力に関心を持ち始めたきっかけは、大学3年生のときの一人旅だ。大学を1年間休学し、途上国10ヵ国ほどをバックパッカーとして訪れた。

旅行中、インドやバングラデシュで、ストリートチルドレンから物乞いを請けた。理不尽な状況にいる人々にたくさん出会った。その度に、「この人たちの将来は、果たして明るいのだろうか」という疑問を持った。

その答えを見つけるべく、いくつものNPOやNGOでがむしゃらにインターンを経験。そんな中、加藤さんは子どもたちを保護する孤児院で、3ヵ月間生活した。この孤児院での経験が、加藤さんの抱いた「途上国の子ども」たちの印象を大きく変えることになる。

子どもたちと寝食を共にする中で、ノートと鉛筆を使えることに喜びを感じ、一生懸命勉強する彼らの姿を目の当たりにした。「どんな人も希望を持って頑張れる」と確信した瞬間だった。この体験を通して、加藤さんは、生涯をかけて成し遂げたいことを見つけた。それが、「世界中の人々が、未来に希望を持てるような世界をつくること」だ。

帰国後、ビジネスでこの課題にアプローチしていきたいと、ボーダレス・ジャパンに入社した。入社後、革製品を生産・販売し、バングラデシュに雇用を生み出す事業に配属。半年間、実力をつけるために徹底的に努力を重ね、大きく成長を遂げた。

それでも自分では、「事業を生み出し、伸ばす社会起業家」としての実力が不十分だということは痛いほど分かっていた。しかし、「一秒でも速く現地の人々のそばで、彼らの生活を変えていきたい」という想いを抑えきれなかった。こうして、加藤さんのミャンマー行きが決まった。

異国の地では、苦難の連続だ。仕入れ価格を決めても、次の日には価格が変わっていて、想定が狂ってしまうことや、村々での会議に村人や役人が来ないこともある。それでも、彼女の強い想いが事業を加速させる。

「早く成長しなければ人々の役には立てない。実力がないのに給料をもらうなんてもってのほか。『社会を変える』なんて言う資格はない」と自分に言い聞かせ、奮起する。2月から事業を開始し、すでに4つの村に拡大。彼女は「事業部長」として、自ら判断しながら事業を推し進めている。

加藤さんは、「苦しんでいる人々の生活を変えるために、1度動き始め、多くの人々を巻き込んだからには、途中で投げ出すことは絶対に許されない」と力を込める。「もしも今、私が投げ出してしまったら、村の人々は再び孤立し、一向に貧困から抜け出せなくなる。彼らが希望を持って生活できる世界から遠ざかってしまう」。

流通網がないことで、商品を適正な価格で購入できなかったり、生産した農作物を市場に届けられない村は、世界中いたるところに存在する。ミャンマーだけに限った話ではない。「そういった村を見つけては、このモデルを導入していく。1日も速く彼らの状況を変えていくために」。加藤さんは今日もミャンマーの僻地を走り回っている。

(取材・構成/オルタナS副編集長池田真隆)  

若者による社会変革を応援するウェブメディア「オルタナS」の記事より一部編集・掲載)


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