鈴木寛とオックスブリッジ生が語る「"グローバルスタンダード"における日本の教育の強みと弱み」

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そんな思いから、3月7日(土)、「オックスブリッジの流儀」初の取り組みとして、文科大臣補佐官の鈴木寛氏をお迎えし、講談社でイベントを開催しました。土曜日の朝にもかかわらず、実際に留学を考えている方、お子さんの留学を検討している方、教育に関わっている方など、定員の50人を超える多様な年齢層や立場の方々にお越しいただきました。国内外の教育事情に詳しい鈴木氏のお話には何度も頷き、新たな視点を得ることもできました。今回は、日本の教育の強みと弱みが浮き彫りになったこのイベント内容を一部レポートします。

左から城口洋平、篠原健、鈴木寛氏、畠山澄子、羽生雄毅

世界のなかのイギリス、オックスブリッジの価値とは?

鈴木(現文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応大学教授、元文部科学副大臣):私は文部科学副大臣時代に、「グローバル人材育成推進会議」の幹事会座長をしており、そこで「グローバル人材とは何か?」という議論を重ねてきました。当然「英語が喋れる」だけの人ではない。私は「日本語以外の言語で喧嘩ができて、仲直りもできる。真の友達をつくれる人材」だと思っています。

昨今、「グローバルスタンダード」と「アメリカンスタンダード」を混同している議論が多すぎるように感じます。アメリカは世界における1つの国であり、ローカルでしかない。グローバルの重要なキーワードは「Diversity (多様性)」です。だからこそ、ヨーロッパを再評価していく意味があると認識しています。

私が通産省に入省した時は、アメリカ一辺倒の雰囲気がありました。その中で、アジア通を育てるべきだという話があり、私はシドニー大学アジア太平洋研究所の研究員としてオーストラリアに赴任し、アジア派として活動してきました。

「重心論」として世界を見た時に、中国や東南アジアに関しては一定のネットワークが日本にはある。「経済成長とは人口とイノベーションの関数である」ということを東大・慶應で教えていますが、今学んでいる生徒は2040年頃に、ビジネスなどにおいて意思決定をする幹部クラスになります。人口予測は、数ある統計の中でも正確性が高いことを踏まえれば、南アジアとアフリカの若年人口は確実に増加し、世界の重心がそこにシフトすることは間違いありません。同時に、金融面では中東は外せない。このように南アジア、アフリカ、中東情勢を見た時に、それらの諸国と歴史的に関係の深いヨーロッパの重要性は再評価されるべきだと考えています。

2010年にオックスフォード大学が公共政策大学院を設立するときに、日本の大学との橋渡し役としてお声がけいただき渡英しました。イスラム国などの問題が表面化する中で、歴史的な関係性としてのイギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパから見た世界の重心を分析する重要性は増してきています。その中で、やはり「オックスブリッジ」は外すことができないでしょう。

篠原(財務省からの留学プログラムにてケンブリッジMBA 2014年卒業): イギリスは、ヨーロッパの一部として、当然ヨーロッパ諸国との交流が盛んなので、多様な価値観が自然と流入してきます。

私は今、官僚として、様々な国際会議に出席させていただいていますが、その中で、アメリカとイギリスの違いをいつも興味深く思っています。例えばアメリカは主導的に議論をリードする一方で、その主張が極論過ぎる場面もあり、イギリスが巧みに落としどころを探し議論の収斂を見つけているのです。

他にも英語の試験でも違いがあります。アメリカ発のTOEFLは、自分の立場をはっきりさせ、個人の経験でもいいので具体例を明示しながらズバズバと発言していくことが重要です。一方、イギリス発のIELTSでは、両方の視点に配慮したバランスのとれた議論が必要で、具体例も社会問題や統計情報などの一般性が求められる、という特徴もあります。