【有料会員限定記事】グローバルに考えローカルにはじめよ/リチャード・ブランソン
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他社との違いを明らかにしたうえで販売方法も考えよう

【質問】 私は今、ジャマイカに戻っています。アメリカのフェニックス大学で経営学の博士課程に在籍していましたが、近頃のひどい通貨(ジャマイカ・ドル)安で、授業料が払えなくなったからです。

いろいろ調べてみると、こういう経済状況でも生き残るには、自分の収入をアメリカドルに対してヘッジ(防衛)する手立てを見つけることが一番いいようです。そこで世界のどこででも売れそうなドリンクを新製品として考案したのですが、その起業に必要な融資をどこからも得られません。

起業家になる夢を叶えるにはどうすべきでしょうか。また、私が学業を続けられるようなアイデアがありましたらご教示ください。(ジャマイカ、キングストン/マーロン・ファークハーソン)

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――ブランソン: マーロンさん、あなたの質問には重要なポイントがいくつも含まれています。なかでももっとも重要なことは、モチベーションです。学業から離れなければならなくなったことは残念ですが、大学の学費を得るために新商品を開発しようという意思には感心させられました。しかしそうは言っても、単にてっとり早く金儲けをするために起業するというのなら、それは多くの人にとってうまく目標を達成するやり方ではありません。

ドリンクからはじめるというのは良いアイデアに見えるでしょうが、短期間でその商品が世界中から引っ張りだこになるとは到底思えません。海外で自社ブランドを起ち上げる費用は莫大ですし、未知数の商品を喜んで扱ってくれる流通・販売業者を海外で見つけることもすごく難しいです。それがいまだに融資を得ることのできない理由ではないでしょうか。

潤沢な資金がないとなると、まずはジャマイカの現地で製品化することにエネルギーのすべてを集中し、その後カリブ海全域に広げていく方法が良さそうです。ジャマイカ島の活気とエネルギーが漲る強力なローカルブランドを創造できれば、パートナーや投資家を惹きつける機会もふえるはずです。

製品についてよく考え、自社のドリンクのどのような特長が他社よりも際立つのかを正確に把握してください。次にそれらの特長を書き出し、将来どういうやり方で買い手にそれらをアピールするかを決めてください。100パーセントナチュラルが売りなのか、それとも地元生産が売りなのかを考えましょう。ジャマイカの家庭の味が売りなのか、それとも現地でしか味わえない何か特別なものなのか、というわけです。

同時に、製品が持つもっと広範な目的や、それで世の中を良い方へと変える可能性についても掘り下げて考えてみましょう。アイデアの1つとしてたとえば、その利益を学生の授業料支援へと振り向ける方法があります。まずは自分自身の教育費が必要だとしても、残りは余裕のない学生の補助に充てるのです。事業の将来も射程に入れるなら、キャンパスで売れるあらゆる商品にこのやり方は適用されるでしょう。

地元ではじめ大成功をおさめることもできる

あなたのケースは、イギリスの「イノセント・ドリンクス」というスムージーとジュースの会社を起業した3人の青年を思い出させます。3人ともほかに定職を持っていましたが、ある音楽フェスティバルに自費でスタンドを出店したのです。そしてスタンドの前にゴミ箱を2つ置き、ひとつにはイエス、もうひとつにはノーという紙を貼りました。来場者にドリンクを試飲してもらい、3人が今の仕事を辞めて新事業をはじめるべきかどうか、空になったカップをどちらかのゴミ箱に投げ入れで投票して欲しい、と頼んだのです。

その週末、彼らが得たのは圧倒的なイエスの意思表示でした。数年後、彼らの新事業はコカ・コーラに買収されましたが、ここで証明したことは、まず地元で小さくはじめ、そして大成功することができると事実です。

あなたからのEメールによれば、フェニックス大学のオンラインコースを履修していることが役に立っているようですね。良いプログラムだとは思いますが、それが唯一の機会ではなく、ほかにも無料のオンラインコースや方法があることを忘れないでください。最近ではインターネット上に、初めて起業する人に対するプランニングやマーケティング、広報の展開方法を教える情報もたくさん存在します。

次に、私なら支援者をジャマイカ国内で捜します。私たちの財団、ヴァージン・ユナイトは、起業家育成センターをジャマイカのモンテゴ・ベイに設置しています。このコースはあなた向きではないかもしれませんが、ここのチームの情報や人脈をシェアすることができるはずです。実際、数人のジャマイカの青年が、このセンターの会合に参加したのちに開発した地元ブランド製品が、今では周辺の島々でも売れています。今や彼らは海外展開まで考えています。

最後に、自分のメンターを見つけてください。できればジャマイカ在住の人物で、食糧やドリンク産業での経験がある人が理想的です。事業の起ち上げは非常に孤独な仕事ですから、助けてくれるメンターは起業や事業拡大を図るときには掛け替えのない存在となります。

ジャマイカのドリンク事業の起ち上げが成功したなら、もう経営学のコースを終える必要はありません。起業こそが実人生での体験学習なのです。そしてそれが成功をおさめたなら、それは、とりもなおさず、あなたが必要としていた卒業証書ではありませんか?

(翻訳/オフィス・松村)

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