東大卒・元官僚×東大院卒・元日経記者&AV女優社会学者「『肩書き』にこだわる男・『生き様』にこだわる女」対談<後編>

「私はジジイと寝るほうを選んで生きていきたい」
先日『肩書き捨てたら地獄だった』(中公新書ラクレ)を刊行した元東大・官僚の宇佐美典也。自由に憧れ、肩書きを捨てて、残金二万円の地獄を味わった彼が対談相手に選んだのは、元東大院・日経 記者(&AV女優)の社会学者、鈴木涼美。お互い、肩書きを捨てた二人だが、その理由からはプライドに翻弄される「男」と、生き方にこだわる「女」の姿が 浮かび上がる。「日経に就職したのは肩書きをキレイにするため」「東大ならモテるというバカな勘違い」「実力よりもジジイの懐」……。ミもフタもない肩書き対談は、いよいよ結論にいたる! 第2回はこちら
東大卒・元経産官僚×東大院卒・元AV女優          photo 中央公論新社 写真部 武田裕介

 数百億円クラスの官民共同プロジェクトに成功して

宇佐美 官僚としての価値観に凝り固まっていたときに会ってたとしたら、鈴木さんに笑い飛ばされる側だったろうなあ。官僚のときは一ヵ月で一日しか家に帰れない、なんてのがザラだったから。分かりやすく、狭い世界の中で追いつめられていました。

鈴木 私も日経の1,2年目はそうでしたよ。会社にべったり。
でも、そこにいても「魂は別にある」と考えてしのいでいました。だからこそ、会社だけに命を賭けて過ごしている人からみれば、うっとうしい存在だったのかもしれないけれど。

宇佐美 所詮、会社は「人生」のすべてを支えてくれる存在では無いですからね。
 
鈴木 でも、大企業の社員や官僚でいられれば、それだけで世間から尊敬されるし、やりがいはあるとは思うんです。宇佐美さんも、居心地は悪くは無かったですよね? 

だからこそ、ともすれば首にでもならない限り、残っちゃう。日本で生きていくのに、大きな組織にいれば、それだけで生きやすいのは確かなことで。

実際、日経のときは部屋も借り放題だったし、クレジットカードも作り放題だった。お金も借り放題だったし、いい感じに守られてた(笑)。

私の場合、特に日経を辞めたとたんに週刊誌に書かれたわけだから、ますます「組織は守ってくれる存在」という実感があるんですよ。だから正直、辞めてよかったかは微妙で。
 
宇佐美 微妙なの? それは意外。
 
鈴木 ああいう世界も、持っておきたかったものではあったんです。週三で許されるなら続けたかった(笑)。 

紙面編集の仕事は好きだったし、今でもやりたい。自分の意志と無関係に手を動かす感じも嫌いではなくて。それだけに、辞めるのに最後は勢いが必要でした。逆に、宇佐美さんが官僚を辞めるときはどうでした?

宇佐美 官僚にいたときによく感じていたことだけど、あくまで一官僚として見られるのであって、誰も「宇佐美典也」のことを見てはくれないんですよね。そしてその官僚から生まれるイメージは「5時に帰る」だとか、「いざ社会に放たれればまともに仕事なんかできやしない」とか。現実の自分は、それこそ馬車馬のように日本のために働いていたのに、そんな実態なんて誰も気にしてくれやしない。

ある日、数百億円クラスの官民共同プロジェクトを成功させたことがあって。「これはやりきった」と感じたんです。だからたまに飲みに行くバーで、ドンペリを入れて、今日は楽しむぞと。

そうしたら、「若いくせにドンペリ入れるなんて」と、知らない女子二人とおっさんに絡まれたんですよ。さらにバーテンが「彼、官僚で」って言っちゃったために、そこから「官僚のくせに、俺たちの税金でうんたらかんたら」と絡まれ続けて。