東日本大震災以後の市民科学の行方を問う---MITメディアラボ所長・伊藤穰一氏らが登壇した「Safecast Conference 2015」
MITメディアラボ所長・伊藤穰一氏

3月22日、デジタル・ガレージにてSafecastによる「Safecast Conference 2015」が開催された。MITメディアラボ所長・伊藤穰一氏や東京大学大学院理学系研究科教授・早野龍五氏、海外からのSafecastのチームメンバーらが登壇。東日本大震災以後における放射能物質の数値測定など市民科学の可能性を感じさせる取り組みの内容が共有された。

オープニングに登場したのは、Safecastのアドバイザーを務める伊藤穰一氏。Safecastは震災後1週間で活動を開始し、チームメンバーらが世界中で計測した放射線データをインターネット上で共有し、地図上にマッピングするプロジェクト。伊藤氏は、フリーでオープンなインターネットがあったからこそ、Safecastが実現できたという。

そして、イノベーションを起こすコストが低下したいま、「アジリティ(機敏さ)」や「The Power of Pull(必要な時に必要なリソースをネットワークから引っぱってくる力)」が重要だと述べた。Safecastでも震災発生時にはほとんどのメンバーが放射線の測定方法について知らなかった。だが、さまざまな知見やDIY、資金調達、開発、アクションなどに関してメンバーが集まり活動を開始した。

そのような活動体であるSafecastを象徴するひとつのキーワードは、「Antidisciplinary(反学問、反分野)」という言葉。メンバー同士で担当を決めずにすべての領域をこなしているという。加えて、クリエイティブラーニングの4要素として「プロジェクト、パッション、ピアー、プレイ」を挙げ、「Safecastはまだ小さいプロジェクトだが、遊びもあり、パッションもある」と語った。

(左)アズビー・ブラウン氏、(右)ピーター・フランケン氏

「情報が公開されていないのではなく、情報が存在していなかった」

これは、金沢工業大学准教授でSafecastにボランティアとして参加するアズビー・ブラウン氏と、SAFECAST JAPAN共同設立者のピーター・フランケン氏のセッション冒頭で語られた言葉だ。「まずデータを取得・公開するため放射線測定器『ガイガーカウンター』を車に乗せて走ったSafecastチームでは、街の全体の平均値ではなく、自宅周辺の数値を知ることができるよう5秒ごとにデータを取得。CC0ライセンス(いかなる権利も保有しない)でデータを公開することで、広くデータを解析できるようにした」(フランケン氏)。

データを収集・公開してからは、それをどのように伝えるかということが重要になる。Safecastでは「Safecast Report」をオンラインで公開。いまでは活動が5大陸、67ヵ国にまで広がっている。車で走るだけではなく、固定センサーを自宅に設置し、リアルタイムで数値が分かる仕組みをつくるなど、福島から離れてもなお不安を抱えている人に対する取り組みも実施している。

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