原発廃炉と新増設
『週刊現代』 古賀茂明「官々愕々」より
福井県の美浜発電所---〔PHOTO〕gettyimages

3月17日と18日、関西電力美浜1、2号機(福井県)、日本原子力発電敦賀1号機(同)、中国電力島根1号機(島根県)、九州電力玄海1号機(佐賀県)の原発の廃炉が正式に決まった。だが、いくつもの問題がある。

これら5原発は、いずれも運転開始から40年前後のいわゆる「老朽」原発である。原発の運転は原則40年と定められている。運転延長のための特別の基準をクリアするには、いずれの原発も数百億円規模の追加投資が必要で、とても経済的にペイしないとされてきた。つまり、5原発廃炉の理由は純粋に経済的な問題であって、間違っても「脱原発政策が動き出した」などと勘違いしてはいけない。

そもそも、数百億円もの追加投資が必要になるのは、極めて危険な原発だからだ。そんなものは本来、規制云々ではなく、電力会社が自己責任で廃炉にするのが当然だ。

しかし、経産省は、基準が厳しくなったのだから政府の責任だとして、廃炉費用などを毎年電力料金に上乗せして消費者につけ回しする仕組みを作った。廃炉の決定が今日まで延びたのは、電力会社がこの会計制度変更を待っていたからだ。

一方、同じ17日に、関西電力は、やはり老朽化した高浜1、2号機と美浜3号機の再稼動申請を行った。これら老朽化した3基の原発の再稼動だけだと世論に叩かれるので、美浜1、2号機廃炉を免罪符にしようとしたと考えられる。

また、高浜1、2号機、美浜3号機は設計が古く、数千mに及ぶ電源ケーブルの被覆材が難燃性でないという問題がある。これらを交換すると膨大なコストがかかるので、難燃性の塗料を塗るだけで済ませるため、3つの原発廃炉で許してもらおうという魂胆もあるのだろう。

ところで、現在、日本の原発は1基も動いていないから、原発依存度は既にゼロである。ところが、不思議なことに「原発依存度をどれくらい下げるのか」という議論が行われている。

そこには、動いていない48基の原発の多くは動かすべきだという前提がある。

さらに、昨年4月の原発を「重要なベースロード電源」と位置づけたエネルギー基本計画。実はこの時点で原発の新増設は決まっていた。何故なら、原発が「重要な」ベースロード電源なら、原発依存度ゼロはもちろん5%とか10%などではなく、相当な割合が必要になるからだ。

一方、すべての原発はいずれ廃炉になるから、重要なベースロード電源維持のためには、いつかは原発の新増設が必要になる。現に、経産省の原子力小委員会の昨年末の報告書でも新増設を認めるべきという意見がいくつも書かれている。

新増設について、宮沢洋一経産相は「現時点で想定していない」としているが、これは「将来は認める」と言うのに等しい。

実は、前述の廃炉の会計基準変更は、直近の廃炉対策というだけでなく、新増設する原発のためでもある。廃炉コストがいくらになってもすべて消費者に転嫁できれば、電力会社は安心して原発を新設できるからだ。

廃炉関連の政策も、結局はすべて原発推進のためということなのである。

『週刊現代』2015年4月4日号より

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