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Viibar上坂優太【第4回】テレビからウェブへ、動画の作り手や予算が大移動する時代が来る!?
上坂優太氏と佐々木俊尚氏
2013年から動画制作のクラウドソーシングサービスを提供している株式会社Viibar(ビーバー)。「クライアントとクリエイターを直接つなぐ」という新しい概念を打ち出し、1年足らずで3億円の資金調達をしたことでも注目を集める。企業が広告や販促にウェブ動画を使うことが一般的となり、急成長を遂げる同社代表の上坂優太氏に、動画制作の可能性について佐々木俊尚氏が切り込む。「動画の時代」と言われるいま、なにが起こっているのか、そう遠くない未来にどんなことが実現されようとしているのか。(文・田中裕子/写真・瀬野芙美香)

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モバイル動画ならではの技法革命は起こるか?

佐々木 もう一つ聞きたいことがあるんですが、上坂さんはモバイルと動画の関係についてはどのように考えていますか?  モバイルの普及で環境はかなり変わったと思いますが。

上坂 これからはほとんどがモバイルからのアクセスになるのでは、と思っています。すでに、YouTubeの流入はモバイルがPCを超えていますし。

佐々木 そうですよねえ。PC時代とモバイル時代とでは、クリエイティブの技法は変わってきましたか?

上坂 うーん、変わるものと変わらないモノがあると思います。変わるものでいえば、マイクロビデオという枠は新たにモバイルが生み出したフォーマットですよね。Vineの6秒動画やInstagramの15秒動画がそれです。一方で、モバイルで消費されている動画がマイクロビデオばかりかというとそんなことはない。十分に長いコンテンツも消費されている。これはブロードバンドが発達して、データ量の大きな動画もサクサク再生できるようになったことが大きいです。そもそも動画ってテレビでもPCでもモバイルでも、受け身で観るモノなんですよね。いわゆるリーンバックのメディアです。モバイルでの動画消費が伸びているけれども、モバイルだからと言って必ずしも屋外で視聴しているわけではなくて、部屋のなかで寝っ転がりながら見ているのも含んでいますしね。PCを持たない若者なんかは、家でもスマホで動画を見ています。

*若者を中心に人気を博している、ショートムービーサービス

佐々木 ああ、なるほど。スマホの画面の大きさは影響しませんか?  

上坂 画面の大きさはあまり関係ないかな、と感じています。というのも、今の若い人って、スマホ画面よりももっと小さいガラケーのときから情報を処理してきたでしょう? だから、長尺のコンテンツもスマホで観られる。かつ、今後スマホは益々大画面になっていくと予想されますしね。

佐々木 へえ、そういうものなのか。言われてみればたしかにそうですね。

上坂 技法的なことで言えば、先ほど申し上げた「マイクロビデオ」と「長尺の動画」というコンテンツの使い分けは明確になるでしょうね。Vineの6秒動画を動画と呼ぶかどうか、というような議論が出てくるんじゃないでしょうか。

佐々木 Vineは動く写真ですからね。アニメGIFのほうが近いかもしれません。

上坂 6秒だとなかなかストーリーが描けないんですよね。ぎりぎり起承転結を表現できるかもしれないけれど、4コマの域を出られません。そうすると、本当に訴求力のあるコンテンツにはなれないかもしれません。

佐々木 僕はアメリカのメディアを毎日せっせとチェックしているんだけど、最近10~15分程度でストーリーをきちんと描いている動画が増えてきたなあ、と実感するんです。これが、すごくよくできていて面白いんですよ。「未来世界でロボットと人間が旅する」とかね。日本だと、オーギュメント5が作っている動画も没入感が高くて、5、6分あるんですけど、つい最後まで見てしまいます。

上坂 没入感は大事ですよね。眞鍋海里さんが作られたAUTOWAYの「雪道コワイ」3部作はかなりバズって大成功しましたが、3本ともそれなりに長さがあるんですよね。でも、それぞれ没入感がすごい。没入したところでオチにびっくりさせられるんですけど(笑)。だから、尺は関係ないような気がします。

*タイヤ販売店のAUTOWAYのCMで「雪道コワイ」「いきなりBAN」「ラバー」の3本からなる。はじめからバズを狙い制作され、AUTOWAYの知名度向上に大きな功績を残した。「雪道コワイ」は1000万回再生に迫る勢い。

佐々木 なるほどねえ。でも、画面の大きさや視聴環境でなんらかの技法は変化していくはずですよね。たとえば、黒澤明の「」なんか、小さなテレビで見ても人物が豆粒みたいで誰が誰かよくわからない(笑)。あれを見ると、「大画面の映画だから成立していたんだなあ」と痛感します。テレビが台頭してクローズアップが増えたと言われるように、スマホの台頭ではこういった技法的な変化はまだ生まれていないのでしょうか。

上坂 いまはまだ技法の進化がスマホの普及スピードに追いついていませんが、デバイスが変われば技法もいずれ変化するのは間違いありません。それが尺なのか、撮影方法なのか、どの変数なのかはまだわかりませんが……。ただ、「音」という要素は確実ですよね。屋外で見る人が一定数いることを考えれば、トレインチャンネルみたいに音がなくても成立するものや、テロップを増やすという工夫が生まれていくでしょう。

佐々木 シリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセンホロウィッツのクリス・ディクソンが、オキュラスリフトについて話しているとき、こう言っていたんです。「これからの10年間は、バーチャルリアリティにとって映画の20世紀初頭と同じ10年になるだろう」。

*頭の動きに表現がリンクする、バーチャルリアリティに特化したヘッドマウンテンディスプレイ

上坂 映画の20世紀初頭、ですか。

佐々木 19世紀の終わりにリュミエール兄弟が初めて作った映画は、カメラの視点は固定されたまま電車が奥から手前に向かって走るようなシンプルなものでした。いわば、演劇の観客席から舞台を見る視点と一緒だったんです。ところが、それから10年経った20世紀初頭、D・グリフィスがクローズアップやクロスカッティングなどの映画技法を確立した。そして、彼が編み出したクローズアップ技法によって、芝居自体がそれまでの全身表現から表情が重視されるようになったわけです。

上坂 技法が変わったことで、ドミノ的にコンテンツの作り方も変わっていったということですね。

佐々木 いま、オキュラスリフトを試すと「宇宙にいるみたい!」って驚くでしょ?  それって、19世紀の人が「列車が自分に向かってくるぞ!」って驚いているのと同じことなんですよね。と考えると、この10年の間に、バーチャルリアリティならではの表現ももっと出てくるはずです。ウェブ動画だって、まだまだテレビの技法を横流ししていることを考えると、独自に進化する可能性を秘めていますね。

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