佐藤優のインテリジェンス・レポート「ネムツォフ元露第一副首相の暗殺と日露関係」

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol056(2) インテリジェンス・レポートより
〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
2月27日深夜、ロシアのボリス・ネムツォフ元第1副首相が暗殺された。

【コメント】
2.
筆者は、ネムツォフと面識がある。直接知っている人が殺害され、ショックを受けているが、率直に言って、ネムツォフはいずれ暗殺されることになるだろうという予感を筆者は以前から抱いていた。ネムツォフは、自己中心的な性格で、政治権力と経済利権の追求に腐心しており、多くの敵をつくっていたからだ。また、ネムツォフは自己保身のためには平気で嘘をつく。

3.―(1)
日露関係においても、ネムツォフは、深刻な虚偽発言を行った。

3.―(2)
1997年11月にロシアのクラスノヤルスクにおいて橋本龍太郎首相とエリツィン大統領がノーネクタイ(非公式)の日露首脳会談を行った。その席で、「東京宣言に基づき2000年までに平和条約を締結すべく全力を尽くす」という「クラスノヤルスク合意」が得られた。「東京宣言」とは、1993年10月、エリツィン大統領が訪日し、細川護煕首相と署名したもので、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の帰属に関する問題を解決して平和条約を締結すると記されている。要するに、「クラスノヤルスク合意」とは、2000年までに北方領土問題を解決するという日露首脳間の約束だ。この約束に基づいて北方領土問題を解決しようと、日露双方の多くの政治家、外交官は頑張った。

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当時第1副首相だったネムツォフは、クラスノヤルスク会談に立ち会い、その後、日露関係のロシア側窓口になった。

3.―(3)
当時第1副首相だったネムツォフは、クラスノヤルスク会談に立ち会い、その後、日露関係のロシア側窓口になった。

3.―(4)
2008年9月17日(水)の「北海道新聞」は朝刊一面トップに<97年日ロ首脳クラスノヤルスク会談 エリツィン元大統領 「四島即時返還」を提案 側近の説得で翻意>との見出しを掲げ以下の記事を掲載した。

<ロシアの元第一副首相ボリス・ネムツォフ氏(48)は十六日までに北海道新聞の取材に対し、在職中の一九九七年、ロシア極東・クラスノヤルスクで行われた日ロ首脳会談で、エリツィン大統領(当時)が橋本龍太郎首相(同)に、北方領土の四島即時返還を提案した、と証言した。>

エリツィンが北方四島を日本に返還しようとしていたという大スクープだ。さらにネムツォフはこう続けた。

<ネムツォフ氏によると、エリツィン氏は九七年十一月一日のエニセイ川での船上の首脳会談で、橋本氏に「平和条約を締結し、われわれが領土問題をきょう解決すべきだ」と提案した。ロシア側で事前の調整はなく、大統領の独断という。提案に「四島」の言葉はなかったが、四島返還による即時決着と察知したネムツォフ氏らロシア側の同席者が大統領に翻意を懇願。大統領は最終的に「二〇〇〇年までになんとか締結するよう、考えさせてもらう」と表明し直した。>

3.―(5)
(4)のネムツォフが行った「歴史的証言」は虚偽の発言である。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol.056(2)(2015年3月18日配信)より