雑誌
「売り上げ半減・制作費大幅カット・地方局壊滅・キー局悲劇」というテレビ局の現実
ふらつく新聞社、壊れ始めたテレビ局
生き残れるのは読売とNHKだけ vol.2
 3月4日、日本テレビの社員に衝撃が走った―。
  原因は、「人事労務制度の改革について」と題されたA4サイズ2枚の社外秘文書だった。
<生き残りをかけた構造改革を提案します>
  こうサブタイトルが付されたその文書には、「今後、長期にわたり放送収入は低迷することが予想され」るとして、「現時点で将来に向かって何らかの総額人件費の抑制策を実施せざるを得ません」とある。

vol.1 はこちらをご覧ください。

 そこで提案されているのが、今年7月から人事制度を一新するという構造改革案だ。新制度で給与水準はどう変わるのか。同社の中堅社員が解説する。

「入社10年目、30歳前後で社員の大半は事実上、昇給が不可能になるということです。40代以上は現在と同じ水準の基本給が維持されますが、職務手当の廃止で月給は実質ダウン。かつてテレビ局社員の生涯賃金は4億円と言われました。それを1億円から1億5000万円下げて、一般の上場会社並みにするというのが、経営側のプランのようです」

 日テレが賃下げで揺れているころ、テレビ朝日では会社側への要求と回答をめぐって「ストライキ突入」が取り沙汰されていた。

 ストの目的は「コンテンツの質の低下につながる制作費削減の阻止、及び構内スタッフの雇用・待遇の改善」。

 「春夏闘闘争委員会」は「各自の職場でストライキを成功させるため最終確認せよ」と全組合員に檄を飛ばして対決を煽ったが、ストは3月24日の設定日を迎える前日に回避された。

「去年は赤字決算でしたが、今年は黒字の見込みです。夏のボーナスも本給の3.66ヵ月プラス諸手当と、昨年に比べて大幅アップになりました。それを受けてのスト回避。毎度のことながら、ポーズだけでしたね」(テレビ朝日中堅社員)

それでも最盛期に比べると見劣りする水準での妥協だった。背景には広告収入の減少がある。電通の調べによると、テレビの広告費は5年連続で減少し、'09年は前年比89.8%の1兆7139億円だった。

景気悪化だけが原因かというとそうではない。民放連が1月28日に発表した見通しでは、今年度の地上波テレビの営業収入は昨年度比で1.8%の減少。つまり、最悪期は脱したものの、いまだ下げ止まらず、構造的な不況に苦しんでいるのだ。「もはや若者たちはテレビを見ない」と指摘するのは、マスメディアに詳しい立教大学教授の服部孝章氏だ。

「今の若者はテレビをつけていても、友達と携帯電話でメールのやりとりをしていたり、ゲームで遊んでいたりする人が非常に多いんです。『ながら視聴』というよりも、テレビは単についているだけ、という感じになっている。テレビを見るにしても、ハードディスクに録画してCMは飛ばして見る。いずれにしてもテレビへの広告出稿が増えることはないと思います」

TBSはストに突入!

 それでもフジテレビ、日テレ、テレ朝は、売上高は横ばいもしくは微減となるものの、最終黒字を予想している。目も当てられないのが、昨年4月に行われた過去最大規模の番組改編で大コケし、キー局の"負け組頭"になったTBSだ。'10年3月期決算で同社は32億円の純損益を計上する予定だ。

 ボーナスも抑えられ、ついに3月19日には経営陣の責任を追及するためにストが行われた。

「昨年はストで番組から組合員のアナウンサーが一時姿を消しましたが、今年は番組に出ているような人は除外されています。ストの目的は、ボーナスカットへの抗議。今年も10万~20万円くらい下がる見通しです。昨年も30万~40万円のダウンだったので、社員の落胆や反発は凄い。状況次第で二次、三次のストもありうるでしょう。

 そもそも『第二の開局』と銘打った昨年の改編が酷かった。当時はキー局で2~3位のポジションだったのに、今はNHK・フジ・日テレ・テレ朝に次ぐ5位で、振り向けばテレ東という状況。改編などしなければよかったんです」(同社中堅社員)

 一方で経営陣が賃金カットに手を付けたい心情も理解できる。業界最低水準のテレビ東京でさえ年収約1200万円(平均年齢38.6歳)とされる高コスト体質を改善したいと考えるのは当然だろう。フジテレビ社員にいたっては1500万円を超える年収(平均年齢45.9歳)を得ているという。

 賃下げはともかく、視聴者にとって見逃せないのは、番組のクオリティ低下に直結する制作費の削減だ。テレ朝ではスト突入をちらつかせてまで交渉したにもかかわらず、肝心の制作費削減阻止は達成されなかった。今期だけでも150億円の制作費削減があったという。

「例えば土曜ワイドは、これまで1本2時間で3500万円の制作費をスポンサーが出していた。それを2600万円まで抑えて作れという話になっています。今や制作費の20%、30%カットは当たり前。下請けの制作会社には『50%カットしろ、それで作れないなら仕事はほかに回す』などと強制している。番組の質が落ちて当然です」(キー局営業社員)

 制作会社のプロデューサーもこう嘆く。

「民放のディレクターは『面白い企画を出せ』と言うが、カネのかかるものは通りません。それで安直な企画ばかりが横行することになる。TBSなどはまだ韓流ブームでいけると踏んで、この4月から水曜21時の連ドラ枠でイ・ビョンホン主演の韓国ドラマ『アイリス』を放送します。韓国のドラマの再使用だから、一話4000万円程度かかる制作費の4分の1程度の費用で済む。
  最近やたらと多いのが海外の"仰天ニュース"を紹介する番組。これも安く上がって、かつ数字がそこそこ取れる。あとはスタジオで吉本などのギャラの安い芸人を並べてワイワイやればいい。カネも手間もかけずに作れて数字も取れというので、似たような番組が並んでしまうのです」

 貧すれば鈍する―視聴者をバカにした番組作りと言うほかないが、「広告収入が3割も減っている現状ではしかたない」と関係者は言い訳する。彼らの合い言葉となっているのが、「放送外収入で稼げ」だ。

「TBSは放送事業の赤字を副業である『赤坂サカス』の不動産収入で穴埋めしてなんとか売り上げを確保している状態ですし、フジテレビはお得意のお台場でのイベントや、『踊る大捜査線』などヒットドラマの映画化で稼いでいます。テレビ朝日は今や"通販のテレ朝"。深夜は自前の通販番組ばかりです。
  また、各局とも放映済み番組のDVD化にも力を入れています。DVDの売り上げはテレビ局のものになるので、いつもDVDになりやすい企画が検討されているんです」
(前出・営業社員)

 制作費が削られているため、高額ギャラの出演者は必然的に敬遠される。

「日本テレビが土日のスポーツ番組『SUPERうるぐす』で元NHKの堀尾正明キャスターを外したのは、高額ギャラを節約するためです。
  また、今年の番組改編の目玉は"浪速のみのもんた"と呼ばれる宮根誠司が司会の『Mr.サンデー』(フジ系列)ですが、これも宮根のギャラなら、みのより安く済むというので起用になった。ただし、宮根で数字がとれるかどうかは未知数。そこで、『朝青龍をゲストに呼べないか』『のりピーはなんとかならないか』と動いている真っ最中です」
(フジテレビ関係者)

 ギャラが安くて数字の取れるタレントばかりが重宝される昨今のテレビ業界だが、CMに出演しているとなると話は別だ。こんな例外もある。

「今春のフジの『月9』(月曜21時からのドラマ)の主演は木村拓哉と篠原涼子です。ギャラが高いキムタクや篠原を起用したのは、数字がとれるということのほかに、二人とも数多くのCMに出ているからです。彼らの主演だと、CMスポンサーを集めやすいという局の営業サイドの思惑があるのです」(放送作家)

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