スゴ本の広場
2015年03月29日(日) 文:中央公論新社 特別編集部 吉岡宏

東大卒・元官僚×東大院卒・元日経記者&AV女優社会学者
「『肩書き』にこだわる男・『生き様』にこだわる女」対談
<前編> 「日経に就職したのは肩書きをキレイにするため」

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東大卒・元経産官僚×東大院卒・元AV女優          photo 中央公論新社 写真部 武田裕介

先日『肩書きを捨てたら地獄だった』(中公新書ラクレ)を刊行した元東大・官僚の宇佐美典也。自由に憧れ、肩書きを捨てて、残金二万円の地獄を味わった彼が対談相手に選んだのは、元東大院・日経記者(&AV女優)の社会学者、鈴木涼美。お互い、肩書きを捨てた二人だが、その理由からはプライドに翻弄される「男」と、生き様にこだわる「女」。「日経に就職したのは肩書きをキレイにするため」「東大ならモテるというバカな勘違い」「実力よりもジジイの懐」……。ミもフタもない肩書き対談が、今幕を開ける!

 「経産官僚」と「日経記者」という肩書を捨てたら

宇佐美 はじめまして。簡潔に自己紹介をしますと、元経済産業省の官僚で今は会社を立ち上げてメガソーラー発電所を売っている宇佐美です。

12月に「肩書きを捨てたら地獄だった」という新書を出版したのですが、これを機に「肩書き」というテーマで私と対比してお話させていただけそうな方を探していて。東大、AV女優、日経記者……と、明らかに自分以上の肩書きホルダー、鈴木さんにたどり着きました。

鈴木 ありがとうございます(笑)。

宇佐美 鈴木さんと私の共通点として、「経済産業省の官僚」と「日経新聞の記者」という世間に広く通用しそうな肩書きを捨て、独立して今も生き抜いている、ということがあると思います。

私の場合「官僚」という肩書きを捨てたら、周りから人が波を引くようにいなくなり、結果、食うや食わずの状況になってしまいました。

その後、「東大卒で元官僚という経歴にもかかわらず、地の底を這いずり回っている」っていうギャップを逆手に取り、必死にブログから発信を続けまして。

人の注意を引いた結果として、そこから仕事を受注したり、メディア出演のオファーをもらうようになり。それらで繋がった仲間と会社を興し、今日に至っています。

ちなみに鈴木さんが日経に入って、辞めて今に至るまでの経緯はどんな感じだったんですか?

鈴木 東大の大学院を出たあと、一度ちゃんとした企業に就職したいなと思っていたんですよ。それまでAV出演というとんでもないブラックな肩書きというか、「黒歴史」を持っていたから(笑)。その肩書きをキレイにするため、「まさかAV女優が混じっているだろう」と思われない就職先として日経を選びました。

最近「元ホステスからアナウンサー」が話題になっているじゃないですか。 あれは騒ぎになりましたけど想定内の話だと思う。でも、AVから日経記者って……。やっぱりほかにいなさそうだし、そこに潜り込んでやろうかなって(笑)。ただ実際に入社したら、意外と楽しかった。

鈴木涼美さんの処女作『「AV女優」の社会学』

それでいつのまにか5年経ったところで、記者から整理部に異動になって、そこで新聞紙面のレイアウトを考える仕事に移ったんです。それもまた楽しかったんですけど、途中で新しいシステムが導入されることが決まったんですね。そこで新しいシステムの使用法を覚えるのがめんどうになって、じゃあそうなる前にやめるかなって(笑)。

辞める前に本も出していたし(『「AV女優」の社会学』)、いざとなればキャバクラとか夜系のお仕事に戻る手もあるし。何とかなるだろうと思ってました。ずっと一つの会社に依存してはいけないと、どこかで思ってたんですよね。

あらためて「肩書き」という視点で言えば、自分の場合、人と比べて圧倒的に優れている強みや、好きなものを見つけられなかった結果であって。色々な分野での「普通」を組み合わせて差別化していくうちに、今日に至った感じなんですよ。

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