【有料会員限定記事】情熱ぬきの目的」は成功しない/リチャード・ブランソン
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そのアイデアは別分野でも活かせるか考えよう

【質問】 起業を成功させるカギは情熱だと言われます。しかし自分が必ずしも情熱を感じない分野で、画期的な新製品やサービスを思いついたとしたらどうなりますか? 既存のマーケットのすき間を埋める斬新なコンセプトが基盤となり事業は進展するでしょうか?それともやはり失敗してしまうでしょうか?(マイク・アクアン・アシー)

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――ブランソン: 創業とは人生における最大の挑戦のひとつで、断固たる決意の持ち主だけが成功の道をたどることができます。情熱はやる気を高めるための効果的なファクターのひとつですが、一方ではあるアイデアが発展する事業となるかどうかの有力な試金石でもあります。

あなたが「よし分かった!」とひらめいたら、こんな点にも注意してください。すなわち、おそらくそのアイデアは、市場のすき間を確認するためには役立つでしょうが、金儲けのためだけに新会社をはじめた場合、多くは失敗に終わるという事実です。自分のアイデアをさらに深く考え続けることなしに、どうやって他人の協力を得たり、他人に製品やサービスを買ってもらうことができるでしょうか?

素晴らしいアイデアは多くの場合、移し替えが可能です。ある分野でうまくいくアイデアを思いつき、しかしその分野では自分が情熱的になれないなら、あなたがワクワクできる分野にそのアイデアを適用してみてはどうでしょうか。自分のアイデアを異なる視点から考えてみると、意外な成果にビックリさせられることが多いものです。

具体例を挙げましょう。私は個人的には財務が得意ではありません。ヴァージンの創業時、銀行との関係はまさに乱気流のなかにあり、人生最大の試練のときでした。当時かなりの時間を、うんざりする役員室で裸足のまま椅子に座り(私は当時、まだヒッピーでした)、銀行の幹部たちとヴァージンの今後に関して議論を闘わせることに費やしました。

ヴァージン・マネーを1995年に起ち上げ、私たちが金融業界に参入すると決めたとき、当然のことながら世間は驚きました。しかし私たちは、銀行の顧客サービスを刷新することに大きな事業機会を見いだしたのです。私個人が金融業に情熱を感じたワケではありませんが、カスタマーサービスという分野には興味がわきました。実際それこそがヴァージンの社風全体の推進力だったのです。

私たちのチームは、崩落寸前の完熟状態にある金融という分野で決定的な違いを生み出したいと願いました。それで一気に跳んでみせたのです。以来、イギリス人の生活に役立つために先頭を切る革新的な銀行のひとつを作り上げようという決意は変わりません。

情熱があるからこそ人は動く

私たちの目的は、単に利益を生みだすことではありません。私たちは顧客サービスへの情熱を、
誰の目から見てもそれが欠けていることが明らかな産業に注ぎ込みたいのです。また、ストレートでほかに例がないやり方で銀行ビジネスを発明し直そうと覚悟を固めています。そのイノベーションの例のひとつが、ヴァージンの空港クラブハウスのコンセプトに基づく、ヴァージン・マネーラウンジです。これは金融業界初の試みとなりました。

2008―2009年の金融危機のあと人々は、銀行は顧客の成功と金融知識の獲得に寄与するべきだと考えるようになりました。この新しい意識が産業自体を変えました。銀行には堅固な価値観のもと、金融的にも社会的にも良い結果を生み出す義務があるのです。

これこそが私たちが、金融業界に足を踏み入れた根本的な理由です。単に金融業に情熱を感じたということではなく、人々が銀行にアクセスしやすく、理解しやすくするということに情熱を感じたのです。私たちの努力は、昨年暮れヴァージン・マネーの上場によって報われました。

起業にあたって情熱が重要なのは、あなたにはスタッフを鼓舞し、彼らがあなたの将来ビジョンを信じられるように助ける責任があるからです。つまりあなたは目的を掲げる情熱的なリーダーでなければなりません。そのようなリーダーの存在こそが、ヴァージンを成功させる中軸となってきたのです。

たとえばヴァージン・マネーのCEOであるジェーン・アン・ガーディアの場合はどうでしょうか。彼女はヴァージン・マネー設立時からのスタッフで、「決してあきらめるな」というモットーを堅持してきました。途中、幾多の挫折を経験しながらも、この事業に対する彼女に情熱こそが、その頭脳を明晰にし精神を不屈にしてきたのです。

情熱について教えることが出来るとは思いません。情熱には伝染力があり、ジェーン・アンの情熱にもそれは言えます。あなたが何かを信じているとき、その信念の力は他人の関心にも火を付け、あなたの目標達成の支援へと彼らを動かします。成功するにはこれが不可欠です。

マイクさん、あなたにアドバイスするなら、まずひらめいた瞬間にさかのぼり、なぜそもそもそんなことを考えるようになったかを理解してください。アイデアの背後にある情熱こそが、あなたを心の底から興味が持てるビジネスや産業に導いてくれるでしょう。決して忘れてならないのは、情熱とは態度以上のものだということです。これはすべての起業家やビジネスリーダーに必要とされるものです。

(翻訳・オフィス松村)