雑誌 企業・経営
ニチレイマグネット 前橋 清社長「人生を変えるのは『思い』と『信念』。惚れ込んで長く続けることで、思いは『信念』になるんです」

磁石に人生を賭けた社長が率いる企業だ。大阪に本拠を置く、ニチレイマグネット。自動車に貼る初心者マークをマグネット化したことなどを皮切りに、シート状のマグネットの市場を独走する。前橋清社長(75歳)の事業哲学、商品開発術を存分に聞いた。

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まえはし・きよし/'40年、大阪府生まれ。'62年に立命館大学文学部を卒業し、トヨタディーラーへ入社。'69年にシート状のマグネットを開発し、独立して事業を始め、'71年に「日本レイアウト工業」を略したニチレイマグネットを設立、以来現職。現在、取引先は公表分だけで約4500社を誇る ※ニチレイマグネットのwebサイトはこちら

仕組み

マグネットで貼り付ける、ガスや水回りの工事の連絡先が書いてあるステッカーやホワイトボードに貼るマグネットのネームプレートなど、我が社の商品は皆さんの身近なところにたくさんあると思います。

私は常に、モノをつくるだけでなく、売れる「仕組み」を考えるようにしていますね。例えば、磁石をつくるだけでなく、家や店舗の建材に鉄の箔を入れていただいて「磁石がくっつくから便利」と売ってもらえば、弊社の磁石も売れますよね。ホワイトボードのネームプレートも、最初に注文頂いたときに弊社で大きさや色やフォントを控えておけば、新たなネームプレートが必要になったら、必ずうちに注文が来ます。逆に「仕組み」を持たない商品は、流行しても単発で終わってしまう。

磁石王

百貨店や洋服店などのディスプレイも次々、マグネットに置き換わっています。接着剤や釘を使わないから、設置に必要な時間を短縮できる。しかも、はがして再利用することも可能です。ビルの壁面に設置する大きな看板も、最近はマグネットシートが使われていますよ。看板に絵を描く人が、屋外で、夏は汗びっしょり、冬はがたがた震えながら作業しているのを見て「マグネットに描いて貼り付ければいいのに」と思い、商品化したのです。

私が磁石の新しい利用法を広められた理由は、どなたにお会いしても、何を見ても、常に磁石のことを考えているから。それ以外にありません。

水練 学生時代は水泳の選手、さらには指導者として身体を鍛えて活躍した。一番左が前橋氏。今もスリムな体型を保っている

宇宙観

ブレイクスルーは、結局「強い思い」によってなされます。私は磁石という素材に惚れ込んだんです。妙なことを、と言われそうですが、磁石は神がかっています。くっつくだけでなく、モーターなど様々な場面で目に見えない力が世の役に立っていますし、地球だって巨大な磁石が宇宙に浮いているようなものです。ここまで惚れ込んだから、様々なアイデアに思い至るのでしょう。

どないや

若い頃はまだ磁石(の奥深さ)を知らず、車が好きだからと、トヨタのディーラーにつとめました。上司に「営業しなさい」と言われ「営業ってどないするんですか?」「車を売ってくるんや!」という会話をしたほど、働く意味も何もわかっていませんでした。
トヨタ自動車さんは、いまでも非常に好きな企業です。創業者が秘めていた「大衆車をつくり、1人でも多くの人にモータリゼーションの恩恵を届ける」という強い思いが、いまだ、形になっているからです。

現在の取引先のひとつであるコクヨさんも同じ意味で素晴らしい企業です。社名の由来は「国誉(こくよ)」。故郷の誉れとなろうという思いをお持ちで、20年以上前から「塩化ビニールなど、環境に負荷をかける素材は使わない」と自主規制していたところなどに、創業の理念が生きていると感じます。