メディアはどこでも始められる? オフィスのあり方で見る、ゲリラとしての米新興メディア
ニューヨーク・タイムズ社入口(以下すべて筆者撮影)

「メディア・スタートアップはどこでも、いつでも始められる」

3月4日、私は両手にキャリーケースを引っ提げてマンハッタン島の上西部に位置するハーレムのゲストルームに足を踏み入れた。前日の寒波の影響で乗るはずの便が欠航になるなど不安定な天気のもと、度重なるトラブルの影響で予定より4時間遅れでの到着だ。辺り一面真っ暗で、靴の高さまで雪が積もっており先が思いやられた。予定を入れず観光するつもりだった翌日も、豪雪でどこにも出かけられずじまいだった。

しかし、次第に気温が上がり晴れの日も続き、今やすっかり雪は解けた。天候の回復と共に私のプロジェクトも進行しつつある。

こちらに来てからの1週間は、元共同通信記者で現在はアメリカでフリーランスの記者として活動する津山恵子さんをはじめ日本人ジャーナリストに会うことが多かった。彼女たちの視点から見たアメリカ新興メディアについて伺っていると、さっそくおもしろい事実が浮かび上がってきた。

それは、オフィスにまつわる話だ。

米国メディアでは発行部数がトップ3に入り、デジタルでは90万人以上の有料会員を獲得しているニューヨーク・タイムズは52階建てと全米で5番目の大きさのビルに入っている。タイムズスクエア付近を歩き回れば、重厚長大なCNNのビルも目に入ってくるし、少し脇の通りを行くとAP通信の奇妙な形をした本社ビルも見えてくる。思わず気圧されるほどの建築物の数々だ。それは新聞社・報道局がひとつの「製造業」であることの象徴だろう。オフィスの中までお邪魔したAP通信社では複雑な機材が所狭しと並んでいた。

一方の新興メディアはそこから南に歩くこと数キロにあるベンチャー企業の集積地に本拠を構えているところが多い。今や数百万ドル(数億円)以上の調達をしているところも数多いにもかかわらず、ほとんどはフロアの一角を占めているにすぎず、シェアオフィスの一部で済ませているものもある。