「都構想」で大阪はダメになる文/藤井聡 京都大学大学院教授

2015年03月17日(火)
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「都構想」で大阪がダメになる

以上、いかがであろうか。都市住民が都市計画の権限を失い、資金が周辺地域に流出すると共に行政プロセスが煩雑化し、都市計画のノウハウが失われる事を通して、大阪は、「中心都市のまちづくり」が不可能となっていくに違い無い──その結果、国内外の他の都市が様々に発展していく中、大阪だけが取り残され、大阪の街は、今よりもさらに衰退し、単なる一地方都市に凋落し、決定的に「ダメ」なっていく──これが、筆者が協定書から読み取った、都構想を実現させてしまった後の「大阪の未来」なのである。

これは要するに、大阪の都心のまちづくりを、その都心の都市住民である大阪市民が担っているなら、その「自治の力」によって、大阪の中心である大阪市に集中投資が可能であったのが、「都構想」によって大阪市民の自治の力が弱まれば、都心部の豊富な税金が、大阪府全域に薄く広く使われていき、結局は、大阪の中心コアが衰退し、溶解してしまうことを意味しているのである。

もちろん、もしも大阪が東京の様に凄まじい一極集中都市であるなら、都心部のおカネを薄く広く大阪府全体に使っても、それでもおつりが来るほどの豊富な税収を得ることができる。そして、その豊富な税収を使って都心部に集中投資を行い、世界と互角以上に競争できる強力な都市を作り上げていくことができる。しかし残念ながら、大阪の現在の経済規模は、東京ほどに大きなものではないのである。実際、大阪市のGDP(経済規模)は、東京23区の25%以下なのである。

そんな大阪が、「さして裕福でもない自治体」であるにも関わらず(近年衰退してきたとは言え)様々な国内外の都市との間の「都市間競争」を戦い抜く力を、なぜ、未だに持っているのかといえば、貧しいながらもその「エンジン部分」である都心=大阪市に対して、どうにかこうにか集中的な都市投資を行ってきたからに他ならない。

そして、貧しいながらも、そんな「集中的な都市投資」を可能とさせてきたのが、「大阪市民による自治の力」であり、それを支えた「大阪市という政令指定都市」という行政の仕組みだったのである。

にも関わらず、そんな都市住民の自治によって都市計画を行うという仕組みを無くしてしまえば、東京や名古屋と対抗するために必要な、キタやアベノ、ベイエリアの投資が長期的に停滞し、大阪は都市間競争に勝ち抜くための「エンジン」を失い、大阪の地盤沈下は決定的となるのである。

もちろんそれは、都構想が実現して、1年や2年でそうなる、というものではない。

しかし、効果的な投資が滞る事の影響は、5年10年という時間をかけて、確実にその都市の活力を停滞させていく。そして都構想が実現して10年、15年とたてば、目に見えて、大阪の活力は低下していくことになろう。

つまり、もう二度と後戻りができない「都構想」を実現し、都心に大阪市民の自治が失われ、政令市という「保護シェルター」が無くなってしまえば、大阪の衰退に拍車がかかり、その地位は大いに凋落し、最終的に「ダメな都市」になっていってしまうことは決定付けられてしまうのである。

大阪の街は、今、大阪にいる人間のものだけではない。将来の子供達、孫達が暮らす街でもあるのだ。

子供達、孫達に、活力ある大阪を残していくためには、一体何が必要なのかを、是非、真剣に考えて欲しい。東京のように一極集中もしていない、都心人口が3割にしか過ぎない大阪で、「大阪市」という都心住民による自治組織を解体し、中心都市の都市計画の経験と熱意の乏しい周辺部も含めた「大阪府」にその権限と財源を譲り渡すような振る舞いは、大阪の街を衰弱させる「愚挙」にしかなり得ないのではないか──誠に残念ではあるが、筆者にはそうとしか思えないのである。

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