賢者の知恵
2015年03月17日(火)

「都構想」で大阪はダメになる

文/藤井聡 京都大学大学院教授

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「都構想」のメリットとデメリット、どちらが大きい?

本現代ビジネス誌上ではこれまで、大阪市特別顧問の高橋洋一教授から大阪都構想について当方の主張に対して意見を頂いて以来、互いに意見を誌面上で公表させていただいてきた。

大阪市長らの「都」構想に反対する藤井聡氏

「都構想」を巡っては、その中身の議論よりもむしろ「場外乱闘」的な側面が話題を集めがちな中、高橋教授から政策議論の機会を頂戴でき、大変に感謝しているところである。そもそも、住民投票前夜に必要なのは、野次馬的な興味をそそるバトルやショーではなく、冷静な議論、討論を措いて他にないからである(http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/03/03/fujii-128/)。

さて、前回の高橋氏の主張をごく簡単にまとめれば、次のようになる。

『「都構想」には、「二重行政の解消」や「既得権構造の破壊」というメリットがある。一方で、確かに、市を5つの特別区に分割する際に、コストがかかることも事実。メリットの方は長期的に生まれるが、デメリットは短期的に発生する。だから、長期的に考えれば、都構想の方が望ましい。』

現大阪市長は、今年の1月時点で「大阪都構想の設計図については、専門家からは批判はなくなりました」と公言しており、しかも、都構想に対して批判した専門家、学者、ジャーナリスト達が激しく非難される空気が濃厚に存在する中、「デメリット」が確かに存在するという当方の主張を改めて認めた専門家・高橋教授の上記の論点整理に、改めて敬意を表したい。

ただしもちろん、高橋氏の論点整理は、当方の見解と異なっている点がある。なぜなら、当方が指摘したデメリット(市の分割による行政コストの向上)は、短期的なものでなく、長期的なものだからだ。

例えば、高橋氏は、行政コストを上げる原因となる「一部事務組合」は早晩無くなっていくと指摘しているが、6000億円以上にも達するとすら言われている一部事務組合が当面の間無くなるとは考えられない。仮に無くなることがあるとしても、そのためには莫大な投資が必要となるのは明白だ。

なぜなら、特別区毎の当該区民のためだけの施設投資が進められないと、一部事務組合は解散できないからである(なお、高橋教授が言及した「シロアリ」については、より数値的根拠なども含めた具体的な議論が提示された折りに、あらためて検討させていただきたいと思う。現状においては、印象論以上の具体的な議論展開は困難なのではないかと考えられるからである)。

とはいえ、当方と高橋氏との間には「質的な相違」があるわけではない。あくまでも、メリットとデメリットのいずれが優越するかという「技術的」「量的」な論点において相違があるに過ぎない。したがってこの問題は、後は、数字と論理でギリギリと詰めていく他決着はない。

そうした厳密な議論がどこで行われてきたのかといえば、それはテレビでもネットでもなく、都構想のために正式に定められた協議会と、その提案を吟味する議会である。ついては、そんな協議会と議会における、メリットとデメリットを巡る議論をたどってみよう。

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