中国
習近平主席を主役とした壮大な芝居!? 中国政界のさまざまな「風景」が垣間見えた全国人民代表大会が閉幕

〔PHOTO〕gettyimages

ピラミッド式のゴマすり構造が構築されている中国共産党の実態

3月15日、11日間に及んだ全国人民代表大会(国会に相当)が、幕を閉じた。

中国の国会は、1年で11日間しか開かれない(もう少し短い年もある)。「一年を二十日で暮らすよい男」という江戸時代の相撲取りを皮肉った川柳があったが、中国の国会議員(人大代表)は、「一年を十一日で暮らすよい男(女)」ということになる。

加えて、中国には民主選挙がないから、国会議員たちは選挙区の有権者を気にしたり、「選挙の苦しみ」を味わうということもない。日本の国会議員のように、毎週東京と地元を往復したり、声を嗄らして有権者と握手して回ったり、首相がいつ国会を解散するかと気を揉むことはないのだ。そのくせ、「人大代表だ」ということで、地元民たちはひれ伏すから、相当な権威を持っている。

このように中国の人大代表は、一見するといいことずくめだが、もちろん世の中には、すべてオイシイ話はない。中国の人大代表たちは、自分を代表に選んでくれた最高権力者(習近平主席)へのお追従が必要なのである。もし最高権力者まで届かなければ、最高権力者の側近へのお追従が必要である。最高権力者の側近へも近づけなければ、最高権力者の側近の側近へのお追従が必要である。最高権力者の側近の側近へも近づけなければ・・・。

そうやって、ピラミッド式のゴマすり構造が構築されているのが、中国を事実上、独裁的に統治している中国共産党の実態である。考えてみれば、民主選挙がなくて、上部からの推薦によってのみ選出されるのだから、自分を選出してくれた「上司」に感謝し、阿諛追従の限りを尽くすのは、ごく自然な行為と言える。これまでは、ゴマすりプラス「袖の下」が必要だったのだが、後者に関しては、習近平政権が「八項規定」(贅沢禁止令)を定めて厳しく取り締まっているので、このところだいぶ下火になっている。

さらに踏み込んで言えば、人大は単なる「お飾り国会」とも言える。中国において人大というのは、「最高の国家権力機関」(憲法第57条)には違いないが、中華人民共和国憲法は同時に前文で、「中国共産党が各民族人民を指導する」と明記している。つまり、「人大が国権の最高機関ではあるが、さらに人大を指導するのが中国共産党だ」という論理なのである。実際、中国のあらゆる重要案件は、共産党中央で決めている。

日本で言えば、法律は国会によって定められるが、その前に自民党の総務会や4役会議ですべて決めてしまい、国会は自民党案の承認の場となるようなものである。それどころか、中国では国会は1年でわずか11日間しか開かれないのだから、深い議論のしようもない。一応、お飾り野党が8党あるが、中国人でこの8党の存在を知っているのは、かなりの政治オタクだけだ。

では、人大とはいったい何なのか? 私は3年前まで北京に駐在していた時、周囲の中国人たちに聞くと、いちばん多い答えは「交通渋滞」だった。人民大会堂で何を議論しているかなど誰も関心はないが、この時期、首都の警備が厳しくなり、交通管制が敷かれるので、交通渋滞が一段と激しくなるのだ。そのため、人大が終わると、北京っ子たちはホッとしていたものだ。

だが、人大代表にとっては、1年にたった11日間だけやってくる、最高権力者に直接、自己アピールできる格好の舞台なのである。ここでうまく習近平主席及びその側近にゴマをすって、自分の存在を認めてもらえば、さらに出世の道が開けるかもしれない。もしくは汚職がバレて捕まりかけている幹部なら、うまく取り入ってお目こぼししてもらえるかもしれない。各人によって思惑は異なるだろうが、それぞれ必死に自分の人生を賭けて阿諛追従に励む舞台が、人大なのである。

そのため、われわれ中国ウォッチャーにとって人大とは、格好の観察の場となる。人大の代表たちが周囲も憚らず最高権力者に媚びへつらうので、普段はブラックホールのような中国政界のさまざまな「風景」が、垣間見えるのである。

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