ついに本音が出た!安倍総理の施政方針演説――『列強』とはなにを意味するのか
古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol.121(2015年3月13日号より)
〔PHOTO〕gettyimages

2月12日、安倍総理は、国会で施政方針演説を行なった。
具体的政策としては全く新味がなかったのだが、私にとっては、驚くような内容が含まれていた。

翌日の報道ステーションで、このことを指摘したのだが、その後、多くの方々から、気付かなかったけど、言われてみれば大変なことだというコメントをいただいた。
その発言を少し長くなるが、まず紹介しておこう。

<経済再生、復興、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍、そして外交・安全保障の立て直し。いずれも困難な道のり。「戦後以来の大改革」であります。しかし、私たちは、日本の将来をしっかりと見定めながら、ひるむことなく、改革を進めなければならない。逃れることはできません。

明治国家の礎を築いた岩倉具視は、近代化が進んだ欧米列強の姿を目の当たりにした後、このように述べています。「日本は小さい国かもしれないが、国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない。」
明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ないわけはありません。今こそ、国民と共に、この道を、前に向かって、再び歩み出す時です。皆さん、「戦後以来の大改革」に、力強く踏み出そうではありませんか。>

さっと読むと、「うん、なるほど」と思ってしまう方もいると思うが、私は、『列強』という言葉に驚いた。

列強とは何か。この言葉の定義は様々になされているが、一言で言えば、世界の秩序形成に大きな影響力を行使する力を持っている大国と言えばよいだろう。

今日においては、その力の背景は軍事力だけでなく、経済、文化、外交などが大きな要素だと考えられている。そのように幅広くとらえた時、日本もすでに列強の一つだという見方が有力である。もちろん、列強ナンバーワンは米国で、西側では英仏独、そしてロシア、中国も列強である。これに、インドやトルコまで加える見方もある。

ただし、列強という言葉の意味は時代とともに変遷している。安倍総理が引用した岩倉具視が憧れを抱いた『列強』とは、明治時代の帝国主義で世界の覇権を争い、領土を含めた各国の膨張主義の競争の中で、大きな力を持つ国々を指している。

鎖国の結果、これらの列強国に大きな遅れをとった<(日本の)国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにする>というのは、まさに当時の国策、富国強兵・殖産興業に国民を駆り立てようということを意味している。

安倍総理は、これを理想として掲げ、<明治の日本人に出来て、今の日本人に出来ないわけはありません>と我々国民を鼓舞したのである。

私は、これを聞いて、「冗談じゃない」と思った。私は、そんなことを目指して心を一つにするつもりなどない。ここでも、「I am not ABE」と叫びたくなった。

日本の将来はもちろん、楽観できない。何よりも、借金大国からどう脱却するのか、少子高齢化の中で社会保障を維持するためにどうするのか、ほとんどゼロに落ち込んだ潜在成長力をどうやって引き上げるのかといった困難な課題を解決するには、国家としての大きな覚悟が求められる。国民に協力を求めたいという気持ちは自然だ。

しかし、よく考えてみれば、これらの国難を招いたのは、全て自民党の腐敗しきった政治の結果だ。つまり、自らが招いた問題なのだ。

ところが、最近の議論を見ていると、安倍総理にはそのような認識はかけらも見られない。
そして、今、国民に求めるのが、「列強」を目指して心を合わせて頑張ろうということなのだから驚いてしまう。・・・(以下略)

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol.121(2015年3月13日配信)より

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