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50代で死んでいくその「無念」を想う 斉藤仁、坂東三津五郎、岩本太郎・大塚製薬社長ほか
人生の佳境でこの世を去る。置いていく家族、やり残した仕事……「運命」と言うには残酷すぎて

老いも若きも、人の死は常に悲劇的だ。だが、自分なりに地位を築き、これからが盛りという50代の死を巡っては、本人や家族の独特の苦悩がある。道半ばにして逝く人々が思うこととは、何だろうか。

どうしても仕事が気がかりで

「残念で残念で、悔しくて……。『どうしてお兄ちゃんが』という疑問が何度も頭を駆け巡りました。納棺の際に、棺に納められてしまった姿を見たときは、気持ちが抑えようもなくて、泣き崩れてしまって……。

でも、一番悔しいのは本人だと思うんです。無念で、思い残すことがありすぎて」

2月21日、約1年半の闘病生活を経て、膵臓がんのためこの世を去った、歌舞伎の名優・十代目坂東三津五郎氏。享年59。

母方の従妹にあたる、女優の池上季実子さん(56歳)は、「お兄ちゃん」と呼んで慕ってきた三津五郎氏の死をまだ受け止めきれていないと語る。

「私が15歳で女優としてデビューしたのも、お兄ちゃんがこの道を勧めてくれて、きっかけを作ってくれたからでした。

2月に入って、転がるように病状は悪くなっていって……。お兄ちゃんのことを人に訊かれると、私は『元気よ』と明るく答えるようにしていたんです。でも、心のなかでは辛くて、かえって明るすぎる、おかしなハイテンションになってしまっていました」(池上さん)

歌舞伎界では、'12年12月にも十八代目中村勘三郎氏(享年57)が急死して衝撃が走ったばかり。伝統芸能たる歌舞伎の世界では、60代からが円熟味を増す時期とされ、まだまだこれからという時期の、無念の死だった。

50代で逝くこと—。それは一般社会に暮らす我々にとっても、思いがけないものだ。

歌舞伎界の先輩として市川海老蔵や中村獅童ら若手の尊敬を集めてきた三津五郎氏の死。

会社員の人生に引き比べてみれば、部下たちを引っ張り、バリバリに仕事をこなして業界でも存在感を持っていた50代の社員が、突然、世を去ってしまうことに相当するだろう。

本人としては、責任ある立場となって、まだまだやりたいこともある、子供もまだ一人前になっていないのに……などと思いは尽きないはずだ。

老若男女、誰しも死に際しては無念があるとはいえ、50代での死には、また一段と深い苦しさが感じられる。