【有料会員限定記事】起業のインスピレーションは、あなたの足もとに
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家に閉じこもっていては何も生まれない

【質問】 これまでの人生でいろいろなことをやってきました。大学にも行きましたし軍隊にも入りました。でも、これまでのもくろみは、すべて失敗だったようです。学生のころ、起業家コースではよい点数をとっていました。自分の事業を起こし、なにか新しいことをはじめようと考えています。しかし一歩も前に進めません。

どうしたら独自のアイデアのひらめきを得ることができるのか、ブランソンさんの体験的なアドバイスをお願いします。(マシュー・ハウマン)

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――ブランソン: これまで新しい製品やサービスの発明で大成功したという例はヴァージンではめったにありません。成功は既存の産業に足を踏み入れ、その品物や製品に新しい息吹を吹き込むことで得られたのです。

たとえば、ヴァージンアトランティックをはじめた時は、初めて商業航空を考案したわけではありません。ヴァージントレインやヴァージンマネーで鉄道事業や銀行業を発明したわけでもありません。そうではなくて、どの場合でも既存の業者のできの悪いサービスを批判的に観察し、サービスの質の基準を体系的にレベルアップしたことなのです。

これが功を奏しました。

マシューさん、私がここで言いたいのは、自分の頭のなかで独創的なアイデアを思いつくことは必ずしも必要ではない、ということです。偉大な作家のマーク・トウェインが生前こう書いています。「すべてのアイデアは二番煎じだ。意識的であれ無意識的であれ、外部の無数の情報源からえり集められたものなのだ」。

そう考え、既存のやり方を壊そうとするなら、まず外部からの情報を参考にすべきだということになります。そうすれば、改良、蘇生、再包装、新しい配送方法などの新しいやり方で利益が出せる既存の製品やサービスはこれだ、と見当がつくはずです。

さらに具体的に説明しましょう。優れたテレビ番組『となりのサインフェルド』を創作したラリー・デヴィッドのような、もっとも優秀な喜劇作家たちに私はずっと興味津々でした。単に人々の会話に耳を傾け、自分も似たような体験をしたことがあるというだけで、いったいどうやって人々の日常的な憤懣や性格上のクセを最高のネタに変えてしまえるのか?――しかし実は、彼らのような作家たちも、家に閉じこもってインスピレーションの到来をひとりで待っているわけではありません。起業家も同じです。

現実の状況のなかにいなければダメなのです。つまり周囲のすべてに耳をそばだて、観察し、手で触ってみることが大事なのです。なにかおかしなことや、うまくいかない時、また、変な匂いや妙な味にでくわすときに突破口は開けます。実際のところ、イノベーションをするしかない製品やサービスを発見するには、五感のすべてを研ぎ澄ましていなければなりません。そして既存の商品を革新する方法を思いついたら、あなたはすでに成功の軌道に乗っていると言えるでしょう。

ひどいサービスの体験がインスピレーションをもたらした

これまでもたびたび述べてきましたが、私が商業航空に乗り出したインスピレーションは、一搭乗者としての不満から100パーセント生まれたもので、それまでは航空産業についての知識は皆無でした。もうずいぶん昔になりますが、ヴァージンレコードのために大西洋上を頻繁に往復せざるを得なかったころ、私はイギリスでも有名な航空会社をよく利用していました。そのチケット代金はいわゆるエコノミー席でもばかばかしいほど高額で、サービスもいつもながらひどいものでした。

いつもどおり搭乗していたあるとき、頭上にライトが点りました。

それで、私のクセで、それまでの搭乗経験について大量のメモを取りはじめたのです。ヴァージンの仲間たちなら絶対にもっと良い仕事ができると思いました。この最低なサービスを、私たちが最高のサービスに替えるとすればどうやるか? 私たちが搭乗客に本物の食べ物ときちんとした娯楽を提供するならどう実行するか? というわけです。

前にも書きましたが、最終的にそのメモを行動計画にまとめ、1984年にヴァージンアトランティックを開業したとき、話題をさらったイノベーションは、搭乗客のもっとも目につく部分でした。私たちは現実に幸せそうで、感じが良く、世話好きな客室乗務員だけ雇ったのです。天才的とはとても言えないアイデアでしたが、それでもこれが当たりました。

その前のヴァージンレコードの店舗でも同じでした。(まだ音盤を店頭で買っていた時代です!)どこでも音楽は買えました。しかし私たちの店にあってほかのどこにもなかったことは、個性的で楽しい雰囲気のなか、音楽通で生き生きとした店員が素晴らしいアドバイスをしてくれることでした。長年の間に顧客はヒッピーからパンクへ、さらにニューロマンティックスへと変わっていきましたが、驚きを与える顧客サービスに専念するという点では、ぶれることはありませんでした。この方法は、まずヴァージンレコードとヴァージンアトランティックでうまくいきました。そして人間主体のサービスを提供するというこの公式が、その後のヴァージンの鉄道、銀行、電気通信、ホテル、ヘルスクラブなど多数の会社においてもコンセプトとなったのです。

忘れてならないのは、デジタル時代の現在においても、かつてないほど人々は違いを生みだすことに熱心だということです。それが多国籍のコングロマリットであれ街角の個人商店であれ、どのような企業にとっても、素晴らしい顧客サービスこそ肝要なのです。

マシューさん、あなたの場合は、毎日のように利用している地元の販売店に批判的な目を向けてはいかがでしょう。彼らの失敗している部分を改良することこそがあなたの事業機会だと考えてください。あなたの友人が、このあたりには自分が求めている分野のいい店が本当に見つからない、と不満を漏らしたらなら、ひょっとしてそのすき間を自分が埋められるかもしれない、と考えてみるのです。

インスピレーションがどこからやってくるかは誰にも予想できません。しかし私が保証します。足もとに転がっているのです。ぜひ五感を磨いてください。

(翻訳・オフィス松村)